2017年5月28日日曜日

Woe/Hope Attrition

アメリカ合衆国はニューヨーク州ブルックリンを拠点に活動するブラックメタルバンドの4thアルバム。
2017年にVendetta Recordsからリリースされた。
Woeは2007年にChris Griggのソロプロジェクトとしてスタート。その後バンド編成になり3枚のアルバムをリリース。前作「Withdrawal」が2013年発表なので4年ぶりの新作となる。Griggは中心人物なので不動だが、メンバーの変遷がまたあったようだ。
なんのきっかけが忘れたが私は前作のみ持っていてなかなか好きだったもので今作も買ってみた次第。

黎明期のドラスティックな出来事の多さで持って音楽性以上に”神秘性”(物語性)を獲得してきたのがブラックメタルなのかもしれないが、やはり一つのジャンルにはすぎないわけでプリミティブなそれから多様な変化を遂げてきた。カスカディアンの台頭やシューゲイザーとの交配を経て、「ブラッケンド」ブランドはよそのジャンルに結合し始めた。そんな中でWoeは割とプリミティブなブラックメタルの音楽性を受け継ぎつつ自分たちなりの音楽を模索しているバンドだなと思っていたが、今作を聞いてもやはりその印象。
基本的には前作からの延長線上にある内容で、デスメタル然としたボーカルの登場頻度が増えているので初めは驚くが、バックトラックは明らかにブラックメタルである。つまり基本トレモロが間断なく空間を埋めていくあのスタイル。歌にメロディアス性はほぼないが(たまにクリーンで歌い上げたりはする)、代わりにギターのリフがメロディアスであり、そのメロディというのもコールドで何か身悶えするような退廃的な陰鬱さがある。ギターの音の作り方も輪郭がざらついて毛羽立ったヒリヒリしたもので、重量感に変更していない。さすがにプリミティブブラックに比べると圧倒的に音質はクリアだが、基本はやはり始祖に習っている。曲の長さはだいたい5分から8分なので、少し長めな程度。そこにドラマ性を程よい長さで投入している。真性プリミティブだとミニマルの要素が色濃いが、このバンドはそこまで反復的ではない。緩急をつけた展開がある楽曲を披露するのだが、美学を追求する劇的なカスカディアン勢とは一線を画すスタイル。カスカディアンが冗長というのではないが、このバンドは余計なパートに時間を割かず、またポスト感漂う芸術性もほぼなし。あくまでもブラックメタルの武器を自分たちなりの解釈で曲に打ち込んでいる感じ。何と言ってもこのバンドの売りは惜しみないトレモロの嵐。そして突出したそのメロディセンスなのではなかろうか。本人たちもその自覚はあると思うんだけど、どの曲でもトレモロが楽しめる。速度を落とすパートではざらついたトレモロや怪しいクリーンボーカルを入れたり、雰囲気抜群。モノクロの色彩でなんとも寂寥とした風景画を描いていく。タイトルは「希望の減少」という意味らしく、非常に後ろ向きで正しいブラックメタルな世界観だと思う。

ブラックメタルの良いところが詰まっていていや〜ブラックメタルだな〜という音楽。プリミティブでありながらきちんとモダンでもあってこういう流れがあるということは嬉しい。メロくて陰鬱なトレモロがブラックメタルでしょ、という人は是非どうぞ。おすすめ。

Protester/Hide From Reality

アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のストレートエッジ・ハードコアバンドの2nd(多分)アルバム。
2017年にTrash King Productionsからリリースされた。
Protesterは2013年にPure Disgust、Red Deathなどのメンバーにより結成された5人組のバンド。活動期間は長いわけではないけどすでに編集版をリリースするなど結構アクティブに活動しているようだ。なんとなく話題に上りがちなバンドっぽくて流行に乗る軽薄なスタイルで購入。

どうもこのバンド、80年代〜90年代のリバイバルな音を鳴らしているらしい。ハードコアに限らず温故知新なバンドはたくさんいるわけで、そんな中でも特に「リバイバル」と称されるからには相当なリバイバル感が必要になってくる。私は昨今ハードコア名盤をポツポツ中古で買ってお勉強をしたりしているので、なんとなく少なくとも表層の音のことはちょっとだけわかるくらいなんだけど、なるほど今風の音とは一線を画すわけで、似てるバンドを挙げるとしたら現行のハードコアバンドというよりも、Agnostic FrontだったりPoison Ideaだったりを例に出した方が音的には近くて説明しやすい。ストレートエッジなのでユース・クルーっぽいかな?と思ったらもっとロウで荒々しい音像。
メタリックに武装したり、プラスオンする凶暴さや多様性をノイズやジャズに求めたりする今風のバンドとは明らかに一線を画す。極端に攻撃的なパワーバイオレンスとも異なる。全体的に抜けの良い明快な音で生々しく、荒々しい。1曲に含まれる、というよりは曲を構成するパターンは非常にシンプルで、テーマを2回3回繰り返して間奏を挟んでまた戻ってくる、このサイクルを勢いで持って突っ走る。派手なテンポチェンジも暴れるモッシュパートもなし。(乗れない音楽ではもちろんないわけで、こうなると暴れるパートはわかりやすく暴れさせているパートと捉えることもできる。どっちが悪いわけではないけど。)ハードコアパンクの初期衝動を改めてそのまま形にして録音したようなイメージだ。ややしゃがれて吐き捨てるボーカルはいかにもハードコアだが、そこはかなとないメロディセンスがあって「Never For Me」なんかはメロディアスと言っても良いかも。ラスト加速するところがめちゃかっこいい。このくらいのバランスがとても好きかも。
今風の音から引き算して作ったんではなくて、これで全部の数が揃った状態なのだ。スタート地点というか視点が今の流行のバンドとは異なる。もちろんそれなら昔のバンドを聞けばいいじゃないってことになるわけだけど、個人的には完全なリバイバル(そんなもん昔のバンドが今の時点で昔の曲を演奏する他ないと思うけど)であったとしても現行のバンドがそれをやることは価値があることだと思う。(自分も含めてなんだかんだたくさんの人は現行のバンドの方をメインに聞くと思うので。)それは流行に対する疑問符だったり、自分たちが好きなもの対する敬愛の念かもしれない。

どうもリバイバルが流行しているような話もあるので突然変異的なバンドではないのかもしれないが、ハードコアの初期衝動が好きな人は是非どうぞ。無骨でシンプルなのがハードコアでしょ、という人なら気にいるはず。

Drawing Last Breath/Final Sacrfice

アメリカはフロリダ州のストレート・エッジハードコアバンドの1stアルバム。
2017年にCarry the Weight Recordsからリリースされた。
バンド名は「息をひきとる」という熟語から。
あまり情報がないバンドだが専任ボーカルにギター二本の5人組のバンドで2015年にデモを、1stEPを2016年にリリースしている。

だいたいどのジャンルでも雰囲気というか全体的な印象というのがあって、例えば音源のアートワークを見ると何かしらのジャンルかな?と想像がつくものなのだけど、この「Final Sacrfice」に関してはハードコアっぽくないな、というのが初めの印象。それで視聴して見ると音の方はもっと変わっていて驚いた。え〜と思ったけど気になって何回か聞いている自分に気がついたので買って見ることにした。
こってりしたジャケットは「メタル的だな〜」と思う人もいるだろうが、音の方もメタル的である。今時ハードコアにメタルの要素を持ち込むのは珍しくもないだろう。例えば重たい音の作り方は昨今のハードコアバンドでも当たり前のように導入されている。Integrityという歴史のあるバンドなんかはかなり大胆にメタルの要素をハードコアに持ち込んで結構びっくりしたものだ。このバンドはそう言った意味ではやり方としては(出来上がった音はあまり似てない)Integrityに似ている。メタル、それもメロディック・デスメタルの要素を大胆にハードコアに持ち込んでいる。普通は別ジャンルの音をいくらか溶かしてある程度時のジャンルの型に再整形するのが王道だろうが、このバンドに関してはメロデス要素をほぼピュアにハードコアのフォーマットに載せている。具体的にはギターで、とにかくクラシカルでメロディアス。いわゆる”クサい”と言われるような荘厳な高音を用いた単音フレーズを大胆に持ち込んでいる。ピロピロしたギターソロもある。ハードコアといえばタフさが売りなのでそう言ったメタルの要素とは水と油じゃないのかな?と思っていた自分にとってはこのバンド相当面白い。思うに変にハードコアにしなかったのが良いのでは。本当に切って貼り付けたみたい。こういうと借り物めいた表現の仕方だが、このバンドはその形式で出音はめちゃかっこいい。結果的に濃ゆいメタル要素を自家薬籠中にしてハードコアと両立させている。メロデス成分を除いて聴いて見るとびっくりするほど地の部分はハードコアである。いわゆるニュースクールなメタリックな音を、ぶっきらぼうな音節に区切って中速でザクザク刻んでいく。音的にはシンプルなのでここにメロデスのフォーマットがすっと載っちゃうのだ。すごい。吐き捨て型のボーカルももちろんハードコアで、知らずに形成された先入観には違和感なのだが、この違和感がクセになる。
調べて見るとDrawing Last Breath以前にもこう言ったスタイルはハードコアの世界でもちゃんとあったらしく、その系譜にあるのがこのバンドみたい。私はこのスタイルにこの音源で出会ったから初体験の面白さがあったわけだ。初めに会えたのがこのバンドでよかったなと思う。非常にカッコ良いから。

ガッチリしたハードコアの屋台骨にメロデスの荘厳さがどっしり構えてさながら堅牢な砦のよう。ハードであるというハードコアの楽しさは少しも減じてない。メロデス好きだけどハードコアはあまり聴いたことがないぞ、という人はこの音源ハマったりするのでは。どうだろ。逆の経路でも大丈夫だと思うんだけど、個人的には。色物なんてとんでもないかっこいいハードコアなんで是非どうぞ。

2017年5月25日木曜日

中村融編/夜の夢見の川 12の奇妙な物語

アンソロジストである中村融さんの編集したアンソロジー。
以前読んだ「街角の書店 18の奇妙な物語」に続く一冊。と言ってもアンソロジーなので直接的なつながりはなくて、同じコンセプトの第二弾。「街角の書店」が面白かったのと、中村融さんのアンソロジーは何冊か読んでいて全て楽しめていたのと、シオドア・スタージョンの作品が選ばれているので買ってみた次第。
収録作品は以下の通り。(版元様のHPよりコピペ)

  • クリストファー・ファウラー「麻酔」
  • ハーヴィー・ジェイコブズ「バラと手袋」
  • キット・リード「お待ち」
  • フィリス・アイゼンシュタイン「終わりの始まり」
  • エドワード・ブライアント「ハイウェイ漂泊」
  • ケイト・ウィルヘルム「銀の猟犬」
  • シオドア・スタージョン「心臓」
  • フィリップ・ホセ・ファーマー「アケロンの大騒動」
  • ロバート・エイクマン「剣」
  • G・K・チェスタトン「怒りの歩道──悪夢」
  • ヒラリー・ベイリー「イズリントンの犬」
  • カール・エドワード・ワグナー「夜の夢見の川」


「奇妙な味」というのは江戸川乱歩の造語で当初英米のミステリーの何編かの物語を評して使った言葉だという。その後微妙にその意味を拡張しつつ文学界で今でもひっそりと使われているようだ。この本ではそんな「奇妙な味」を持つという視点で色々の中短編が集められている。あとがきに書いてあるのだが、この「奇妙な味」というのはここではジャンルを指す言葉ではないので、いろんなジャンルにまたがってお話が集められている。ミステリーもあれば、スプラッター調の物語もあり、良い意味で趣向がバラバラでそこが魅力。ただ読んでいて思ったのは本格的なファンタジーやSFにカテゴライズされる話は一つもない。あんまり現実から離れた世界を舞台にしたり、荒唐無稽な生物やガジェットが出てくるとそれ自体が”異常”になってしまってなかなか微妙なさじ加減である「奇妙さ」が演出しにくいのだと思う。きっともっと大きいツッコミどころができてしまうのだ。そっちに目がいってしまうから、奇妙な味を演出する場合ほとんど日常を描くことになるのではないかと思う。あたかも明るい歩道に仕掛けられた陥穽にふとしたはずみではまり込んでしまうような、気づくと知らない路地に迷い込んでしまったような、街の喧騒がまだ聞こえるけどちょっと雰囲気がおかしい、そんな雰囲気だ。本格ミステリーとは違ってここでの謎は解決策が提示されるわけではないので、謎がそのまま奇妙な形の影になって読者の内側に張り付いていくことになる。謎が面白いのはそれが解けるからだというのはあるが、解けるまでの過程が面白いということもあって人によってはそちらに重きをおく人もいるのかもしれない。なぜなら未解決の謎がもしもとなって自分の中で新しい物語が始まりだすからだ。そういった意味では無味乾燥な人生を彩るちょっとした味付けとして「奇妙な味」があるというのはなかなか良い。

個人的には動物は喋れないから可愛いと思っているので「イズリントンの犬」はよかった。犬つながりで「銀の猟犬」も良い(この本で一番好きだ)。これは解明されない謎がプレッシャーになりそれを打破する。なんとも後味の悪い決断の果てには一抹以上の物悲しさ、そして損なわれた正気(つまり批難)が提示されるのだが、恐れを超越した動きがあるので実は爽快であると思う。この場合は心の状態と動きを描くのが小説の目的であるので、そのための奇妙な道具たちにその素性の胡乱さを問うのはあまり意味がない。この道具のハマり具合というのが個人的にはすっと整頓されているように思えてそこが非常によかった。

「街角の書店」に比べると短編の数が減ってそのぶん一つあたりのページ数が増えている。より濃厚という意味で良い2冊目。気になっている人はやはり1冊目から手に取るのが良いのかもしれない。

2017年5月22日月曜日

Rolling Stoned#8 VVORLD『Highway Shits』Release Party@新代田Fever

日本は東京吉祥寺のハードコアバンドVVORLDが2017年に2ndアルバム「Highway Shits」をリリース。リリースパーティをやるよ、というので行って来た。というのもVVORLD自体がかっこいいのに加えて出演陣がとても豪華なもので。全部で15のバンドが出演。ほとんどがハードコアという大きなジャンルで括られるバンドばかりだけど、中には大阪のスラッジBirushanahや同じく大阪のストーナー・ロックバンドSleepcityなどハードコア以外のバンドも名を連ねていてとても面白いメンツなのだ。
なるべく全部のバンドを見たい派なので私は開演前に行くことにした。会場はFeverでこの日は14時会場だったのだけど、ちょうど一番雨がひどかった時間帯かも。傘をさすけどなぜかいつもびしょ濡れになる男である私はこの日もびしょ濡れで会場に到着。フロアに入るとフロアの左にセットが設けられている。つまりこの日はステージとフロアの2ステージ制で交互にバンドが演奏する。こうすると転換の時間を節約してたくさんのバンドを消化できるというわけ。Feverは広くて綺麗なので物販もバンドぶん対応できていてよかった。
以下感想なんですけどバンドの出演順番間違っている気がしています…。記憶力がなさすぎて違ったら申し訳ないです。

①Self Deconstruction@ステージ
見るのは2回目かな?美少女ボーカル、美人ゴスロリギタリスト、細マッチョドラムとキャッチーかつ情報量が多い見た目と裏腹にステージングと音楽はハード。曲がかなり独特で耳と頭がおかしいので間違っているかもしれないが、あまり反復の要素がない。普通のバンドは激烈でも反復性があるから円を描いて走るんだけどこのバンドの場合は直線で走り抜ける。だから常に今がすごいスピードで過ぎ去って行く。通過している新幹線を呆然と眺めているみたい。グラインドコア/パワーバイオレンスと名乗っているだけあって、たまにくる低速パートがかっこよかった。

②Super Structure@フロア
こちらも2回目。元ネタのFall Silentも聞いたんだけどあまり共通項が見出せない。パワーバイオレンスバンドなのだが、ステージングが凶悪。ただ激しいというか怖い。「パワー”バイオレンス”なんだよ、ふざけんな」という覚悟が滲み出る凶暴性。目出し帽かぶったボーカルもさることながら他のメンバーの動きも切れている。ギター振り回して当たったら危ない、とハラハラするんだけどびっくりするくらいかっこいい。ただただ低速パートのみにフォーカスするようなバンドではなくきっちり速いパートもかっこいいという清く正しい(つまり濁っていて悪い)パワーバイオレンスバンド。

③Enslave@ステージ
見るのは初めて。男女混成ツインボーカルのハードコア/クラストコアバンド。ギタリストも二人なのでメンバーが多い。激しいハードコアを基調に叙情性を取り入れていて、またメッセージ性も強い。日本のハードコアバンドの系譜を感じさせる。男性ボーカルも強いのだが、どちらかというと女性ボーカルの方が鋭く、逆に男性ボーカルは激しい中にも丸みがあってそれが良い対比になっているなと思う。演奏は非常にかっちりしてまっすぐ。見え隠れするメロディラインが高揚感あってかっこよかった。

④Sleepcity@フロア
大阪のストーナーバンド。見るのも聞くのも初めてでドラマーはBirsuhanahでもドラムを担当している。立ち居振る舞いからハードコアとは一線を画す感じでワクワクする。音を出して見ると果たしてかっこいいオルタナティブ・ロックだった。もっと煙たくて怪しげなものかと思っていたのだけど、かなりかっちりしたロック。ファズなのかはわからないけどグシャとした中にもざらついた温かみのある中域が分厚いギターに歌が乗る。歌も歌うと叫ぶの中間で全体的にはかなりエネルギッシュで激しいのだが、どこか気だるい(音楽がとい意味ではないですよ)雰囲気があって、あの頃のオルタナティブを感じさせる。初めて聞いたのになんか胸を締め付けるようなノスタルジーを感じてしまう。モダンなアップデートでオリジナリティのある、単なるリバイバルにならないオルタナティブをプレイするという意味ではSunday Bloody Sundayに通じるものがあると思う。音源が欲しかったけどなかったみたい。

⑤Band of Accuse@ステージ
見るのも聞くのも初めて。福島の4人組のバンドでメッセージ性の強い音楽をやっているとのこと。音楽的にはハードコア/クラストコアという感じ。スラッシーナリフで組み立てられたシンプルながらも力強いコーラスがよく映える男らしい音楽をプレイ。飾らないシンプルなハードコアなんだけど演奏は非常にカッチしていてよかった。やはりソロも入れてくるギターがハードな曲にキャッチーさを付与していると思う。個人的にはドラマーの人がすごくてちょっと独自の癖があるのかわからないけど妙に耳に残る。ヅタヅタ刻むD-ビートも力強くかっこよかった。

⑥System Fucker@フロア
続いてはSystem Fuckerなんだけど個人的にはこのバンドが結構楽しみで。というのもいでたちがすごい。正しいクラストコア(パンク)という感じでボーカルの人は細くそして高いモヒカン頭である。他の人もなんともクラストないでたち。パンクというと一般的なイメージはこうなのかな?この日は異彩を放っていた。メタリックに武装したあくまでもクラストコアという音楽性で、D-ビートに生き急ぐような前のめりの演奏が乗っかる。思っていた通り華のあるボーカリストで、Dis系の男臭いがなり声とはちょっと違うんだけど、無愛想ながなりがかっこいい。この人がフロアを動き回る。上背があり、蹴り上げる踵の高さ!イメージとしてはサメみたい。突進したり、突き飛ばしたりと暴力的なんだけど陽性のエネルギーがあって、(怖いのは怖いけど)なんだか楽しい。フロアにいる人もきっとそう思っていたはず。とても盛り上がっていた。

⑦Fight it Out@ステージ
このバンドも見るのは2回目。今年リリースされた新作がとても良かったのでライブをまた見たかった。ストップ&ゴーを繰り返すショートな楽曲を繰り出すパワーバイオレンスバンドだが、HIp-Hopアーティストをアルバムのゲストに迎えたりと生々しいストリート感を演出した独特の楽曲をプレイする。この日おそらく一番フロアが湧いたバンドだったのではなかろうか。ボーカルの方がフロアに降りてきてからは特に危ないダンスフロアになっていた。ライブで聴く楽曲は改めて肉体的で速度を落とすタイミングが絶妙でみんなが暴れるわけだと思う。鬱屈しているというよりは、断然鬱憤を晴らすかのような爽快感がある。

⑧LAST@フロア
続いては岡山県から車で8時間かけてやってきたLAST。1時間ないステージのために16時間とさらに色々な準備の時間使うのだから本当にすごい。本当ならこっちから行かないと見れないんだもの。ありがたい。専任ボーカルにギター二人の5人組のバンド。日本の伝統を感じさせるメタリックなハードコアをやっている。コーラスワークを大胆に取り入れているという意味ではBand of Accuseに通じるところもあるのだけど、こちらのバンドはもっと曲を凝ったものにしている。装飾性はないのだけど、速度の変更や展開などがあって面白い。最終的にあくまでも肉体的なハードコアであり続けているところにかっこよさがある。ボーカルの人は暑くて前のめりなMCもそうだし、フロアを所狭しと動き回る。ジャンプ力がすごかった。ハードコアの持っている激しくもポジティブな部分が前面に出ていて強いなと思った。(ポジティブでいる方が難しいと思っているので。)

⑨Birushanah@ステージ
続いては大阪の和製トライバル・サイケデリック・スラッジ。Birushanahは大好きなのでこのイベントに名を連ねているのにびっくりしつつも嬉しい。音的には明らかにこの日一番異質でメタルの、それも相当独特なメタルを鳴らしている。この日も特に迎合することなく最新作を中心に毘盧遮那世界を展開していた。メタルパーカッションはさらに楽器が増えて要塞のようになっていた。このバンドは打楽器が二人にギター一人という一見するとアンバランスさなのだけど、ギターが鉄塊のような低音を担当する反面、様々な工業的な廃材で組み上げられたメタルパーカッションがキンキン響く高音でメロディというかその名残のようなフレーズを担当。おまけに最近はボーカルの歌の度合いが強いので見た目よりとっても聴きやすい。やはり最後にプレイした「鏡」にBirushanahの魅力が詰まっていると思う。現実に立脚するのがハードコアならメタルは異世界に連れて行く。この日も短い中でもトリップ感満載だった。
そしてすごいどうでもいいけどボーカル/ギターのIsoさんはとてもお痩せになったのではと思います。

⑩ELMO@フロア
続いて東京のハードコアバンドELMO。もうずっと前になぜか1枚だけCD「Still Remains...」を買って持っている。この日多分一番尖っていたのがこのバンド。低音に特化した極悪なハードコアを鳴らしている。テンポチェンジも多用しているが、基本的には速度は遅め。ボーカルの方はシュッとした人で高い声で絞り出すように叫ぶのが基本だが、たまに這いずり回るような低音も出してくる。この人はひょっとしたらラッパーもやっているのかも。ハードコアでは客に暴れろと煽るバンドは多いのでは。このバンドも煽るのだが、それが変わっていて普通は演者と客の間に共通の連帯感がある場合が多いのだけどこのバンドは観客すら敵くらいのヘイトをぶちまけてくる。非常にヒリついた空気で緊張感が半端ない。ほんのちょこっと見ただけなのでなんとも言えないのだが、そもそもライブってなんでしたっけ?という問題提起にも思えた。

⑪Saigan Terror@ステージ
続いては東京の高円寺のハードコア。見るのは2回目。年季を感じさせるいぶし銀のメタリックなオールドスクール・ハードコアをやっているのだが、とにかく怖い。ボーカルの方の見た目もあるだろうけど音の方も超いかつい。そういった意味では日本のハードコアらしい叙情性というのはそこまでなくて、代わりに攻撃性と速さと重さがある感じ。コーラスワークもシンプルで恐ろしげ。スラッシーなギターはかなり動きの激しいギターソロにも反映されているが、やはり刻みまくるリフがかっこいい。良い感じに音が抜けているのでメタルの重苦しさがほとんどない。どちらかというとロックンロール的だ。このバンドはそのままだと相当怖いのだけど、ギタリストの方のMCでバランスが取れている。よくもあんなに言葉がポンポン飛び出してきて、どれもが面白いものだな〜と思う。

⑫Shut Your Mouth@フロア
続いては昨年1stアルバムをリリースしたShut Your Mouth。こちらも見るのは2回目。こちらも現行型のハードコアを鳴らすバンドで、一気に速度を落とすパートを取り入れた楽曲はハードコア的な踊れるものなのだろうが、それだけではない深みのある独自のセンスがあると思う。叙情的というのは何も装飾的であることでも、わかりやすいメロディがあるわけでもない。このバンドはニュースクールっぽいなと思う。ニュースクールというと激しいハードコアにプラスオンで情報を追加するイメージなんだけど、そこを通過してきているイメージ。2本のギターがリフに加えて奥行きのある要素を曲に持ち込んでいるし、ちょっとFall Silentっぽくもある若さのあるボーカルはとてもエモーショナル。ラストの「Grey World」はかっこよかった!この日一番良かったかも。

⑬SLIGHT SLAPPERS@ステージ
続いてTokyo PowerViolenceスラスラ。今日ボーカリストの方はメガネではなくきらきらひかる眼帯をつけていた。(あとで外してお客さんに優しく(?)かけてあげていた。)前回見たときと同じく妙にポップな前半から後半一気に加速する曲でスタート。このバンドは今風の低速パートをほとんどやらない。音的にもギターは中域を分厚くしたハードコア〜パンクを感じさせるあえて肉抜きした生々しいもの。ショートカットな超特急で突き抜ける。そういった意味ではある種乗りやすいわけではないのだけど、そこをコーラスワークだったり、フリーキーなポップセンスだったりで速いだけでなく曲にフックをつけることで魅力的でステージで映えるもにしている。またボーカリストの人の動きやその他のメンバーのステージング(みんな楽しそう)で明るくて、楽しいものにしている。

⑭Friendship@フロア
フロアのトリはこの夏1stアルバムのリリースがアナウンスされているFriendship。期待値の高さと自分たちの大量の機材を使うことからとりなのだと思う。縦横に2✖️2に積まれたOrangeアンプからとんでもない轟音を鳴らすバンド。(豊富な物販でもSunn O)))のモチーフを拝借したりしている。)超高速と超低速を行き来する楽曲は現行のパワーバイオレンスに括られるバンドだと思う。ひたすら低音に特化した様はELMOに似ているが、あちらはざらついた低音だったのに対してこちらはもっと密度の濃い壁のような低音。また積極的に煽るELMOに対して、こちらはMCなしの楽曲没入型。(要するにもっと無愛想とも言える。)ひたすらブルータルな楽曲を繰り出していく。あえて楽曲に隙間を開けない、また開けても全開でフィードバックノイズを鳴らすやり方で客に拍手や歓声をあげる暇すら与えない無慈悲なストイックさ。ある意味客を置いてけぼりにするようなイメージで、客の方もただ圧倒されて首だけ降っているみたいな状況になっていた。個人的にはやっぱりこのバンドはドラムがすごい。シンプルなセットででかいドラムのパートをでかい音で”一定”のペースで鳴らし続けるのは結構異常事態ではと思う。そういったところも含めて潜行というか窒息感があってすごくかっこいい。

⑮VVORLD@ステージ
イベントのラストはもちろんVVORLD。ライブを見るのは初めて。今年新作された「Highway Shits」のリリースパーティな訳だけどその新作のかっこいいこと。期待度も非常に高かった。改めて生で楽曲を聴くとだいぶ独自の音を鳴らしている。根っこがハードコアだとしても、出ている音はメタルを通過したブルータルなもの。強くデス声めいたボーカルもそうだが、動きの激しいギターもそう。煙たく充満するフィードバックノイズもそうだし、高い音も使ったりしていて相当不穏である。ソリッドというよりはざらついた質感でハードコアのフォーマットでかなり先鋭的で独特な音を鳴らしている。メッセージ性もいわゆるストレートなハードコアのそれとは微妙に異なり毒気のある個性がある。ラストを飾る「Living Hemp」は長丁場のイベントの大団円ということで感動的ですらあった。

全15バンドというとでちょっとしたお祭り状態。ハードコアを基本にしながらも幅広いアーティストを全国津々浦々から一堂に集めるというのは贅沢で非常に楽しかった。こんな機会はそうそうない。まだ知らないかっこいい音楽に出会えたという意味でも非常に良い場所だった。
VVORLDのパーカーとFRIENSHIPのT-シャツを購入。もっと色々欲しかったな〜といつも帰宅してから思う不思議。ライブハウスの外に出てたら豪雨はとっくにやんでいた。雨上がりの濡れた道を気持ちよく帰った。

2017年5月20日土曜日

グレゴリイ・ベンフォード/時空と大河のほとり

アメリカの物理学者兼作家の短編小説集。
こちらも漫画家の弐瓶勉さんが好きな短編集としてあげたもの。わが国では1990年に出版されたのだが、こちらもすでに絶版状態なので古本を購入した。

もう一冊のグレッグ・ベアの「タンジェント」はSFとファンタジーの混ざり合った物語だったのに対してこちらはハードSF。ハードSFというと難解というか専門用語も多くて決して読みやすくはないという印象。この本でいうハードというのはフィクションであるものの科学的な根拠の度合いが強いというもの。実際にはない技術や事象を描いているのはそうなのだが、それが頭の中の想像やひらめきで生まれたものではなくて現状の科学技術とそれを利用した観察から生まれた考察でもって書かれている。何と言っても著者ベンフォードは現役の物理学者なのだ。科学的な知識と考察に関しては他の作家に比較して抜きん出ているだろう。(もちろん科学者が一番面白いSFを書けるわけではない。しかし他の作家には出せない説得力とリアリズム(総合的に見れば虚構であるが)を物語に添えることができる。)
実際の科学が抱える問題や課題を元に物語が始まっているから、そういった意味では物語の組み立て方が違って面白い。どの物語も中心に科学が腰を据えている。確かにハードな内容になっているが決して頭でっかちの小説になっていないのがこの作家のすごいところ。自身をモチーフにしたような科学者だけでなく、自堕落で向こう見ずな若者、恋に悩む女など魅力的なキャラクターを生き生きと描いている。根っからの学者であるとともに根っからの小説家でもあるのだと思う。どれも心の機微を心情をそのまま書き込むのではなく、その些細な身体の動きに託しているような気がして、そういった意味ではアメリカの作家ぽいし、私はそういった書き方が好きなのでハードさも意外にすっと受け入れることができた。思うに科学技術は人間が使うものなので、それ自体を書けば必ず周辺の人間を描くことになる。問題を扱えば人を描くことになる、という小説の基本を実は当たり前のように抑えているなと思う。
描く物語には作者本人によるあとがきが収録されている。どうも読んでみるとなかなか自信たっぷりな人だな!と思ったのだが、そうではない。自分の仕事に誇りがあって、それでいて強烈な負けん気があるのだ。特にアメリカ合衆国における南部人の実態とはかけ離れたイメージに静かな怒りを燃やすあとがきを読むとその情熱家っぷりがよくわかって途端になんとなく好感を持ってしまった。

人間がとんでもない姿になっている未来を各短編もあれば、現代の実はSFじゃなかった!な短編もありバリエーションに富んでいる。とっつきにくさも小説自体の完成度の高さで気にならないはず。SF好きな人は是非どうぞ。弐瓶勉さんオススメなので、「BLAME!」好きな人も気にいると思います。

HEXIS/Tando Ashanti

デンマークはコペンハーゲンのブラッケンド・ハードコアバンドの2ndアルバム。
2017年にHalo of Fliesなどからリリースされた。
2010年に結成されたバンドで日本を含む様々な国でライブをやっている。どうも最近ボーカルのFilip以外のメンバーが全て脱退してしまったようだ。

Celeste系のトレモロギターを壁のように聳え立たせるいわゆるブラッケンド・ハードコアなのだろう。トレモロといっても低音も使う、そして使っている音自体が分厚いということで絶妙なメロディアスさ、退廃的な耽美さ、コールドな儚さといったプリミティブなブラックメタルからの影響は色濃いといっても結構音自体は別物になっているなという印象。異形のハイブリッドといった黎明期は既に過ぎ、なんという名称が正しいのかはわからないがだいたいジャンルとしては確立した感はある。この間来日も果たしたスウェーデンのThis Gift is a Curseともかぶるところはある音なのだけど、結構印象が違う。向こうはあくまでもハードコアを基調としていて同じような音を使っても曲は結構派手で動きがある。テンポチェンジやリフの多様さといった要因が働いているのだと思う。一方このHEXISというのは音は似ているもののそういったハードコア的なカタルシスが意図的に削除されている曲をやっている。一つはテンポが遅い。ギターとベースの音の数は多いので、これでドラムが早いビートを刻めば爽快感が出そうなものなのだが、あいにくとそういった優しは持ち合わせてないらしく遅々としたとまではいかないものの淡々としたリズムでビートを刻んでいく。こうなるとトレモロギターは露骨に重い、重すぎる。速度が遅いという意味ではスラッジ/ドゥームなのだが、ドゥームなら粘りのあるリフを曲の中心に据えたり、スラッジでも鈍足リフの間に息継ぎする暇があるもの。しかしHEXISは神経症的に隙間を丁寧に埋めていくので結果的に非常に息苦しい音の密室が出来上がっている。曲によってはアンビエントパートを入れているが、美麗なアルペジオが出てくるわけでもなく、ひたすら殺伐として不穏。神経症的な音の密度からの解放という意味では不思議に癒される仕組みになっている。
Celesteなんかと違ってギターの音がクリアではなく、輪郭が曖昧に汚されてブワブワしているのでこの密室の壁がどうも伸縮していて狭まっているような感じがする。音で壁は作れないからこれは妄想なのだが、不安は感染するみたいな感じで非常に面白い。音楽的にはDownfall of GaiaやRorcalと似ているのだが、こちらはそれらのバンドにある長い尺を活かしたドラマ性を減退させてより肉体的な印象。こうなるとジャケットの黒と白、ナイフを握りしめた俺とお前の関係性、というアートワークが非常にしっくりくる。

ブラッケンドは音の種類の形容詞に過ぎないが、やっている音楽も呪い属性のようないやらしさがあってそういった意味でも大変に黒い。この手のバンドが好きは人は是非どうぞ。