2013年1月20日日曜日

レイ・ブラッドベリ/二人がここにいる不思議

昨年亡くなった巨匠ブラッドベリの短編集。
まずタイトルがすごくいい。タイトル買い。
1988年に出版されたようだ。
ブラッドベリは、えーと、火星年代記、十月はたそがれの国、何かが道をやってくる、華氏451度を読んだことがあるからこの本で5冊目。
レイ・ブラッドベリというとSF!というよりは(今まで読んだ4冊の本によるところがお起きのだろうけれども)幻想作家という認識で、この本を読んでさらにそのその感が強まった。
23篇の短編が収められていてSF要素の濃い作品ももちろんあるけど、ほとんどが日常の延長線上のぼんやりとしたその先にあるような不思議な話や、あるいはふっとした陰に潜んでいるようなちょっと怖い作品ばかり。

ローレル・アンド・ハーディ恋愛騒動
ローレルとハーディとは昔の映画俳優らしい。お互いにローレル、ハーディと呼び合う恋人の出会いから別れ、そしてその先を書いた作品でとにかくラストがいい。切ないのにほっーとさせる。
全部で20ページないし、お互いの本名も出てこないのに、2人に個性があって、読んでると彼らが好きになる。 すごい。不思議。

さよなら、ラファイエット
ラファイエットとは第一次世界大戦で活躍したアメリカの志願兵で構成されたフランスの空軍とのこと。
作家の主人公の隣に住む老人はそのラファイエット隊の生き残りで、 夜毎ドイツ兵が飛行機に乗って彼を訪れるという。
普通なら呆けた、または(彼は英雄であって、つまり敵対するドイツの兵士たちと飛行機で戦ってたくさん殺した)罪の意識から病んだ、と説明がつくところが、ブラッドベリの筆致にかかるとこれがまたすばらしい贖罪の物語になるから、すごい。不思議。
きにいったフレーズがあったのでここに記す。
「(前略)なんてこったい。ひどいもんだ。悲しいことだ。どうしたら救ってやれるだろう。 戻っていってやりたいよ。ほんとうにすまん。あれは起こってはならんことだった。みなが呑気でいた時分に、誰かが忠告してくれなきゃいけなかったんだ。戦争ってのは死ぬことじゃなくて、思い出すことだ。終わってすぐどころか、ずっと後になってまで思い出すことだと。みんな悪くおもわんでくれ。そいつをどうやって言う、つぎの手をどう打つ?」

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