2013年6月16日日曜日

R・D・ウィングフィールド/夜のフロスト


イギリスの名物警部フロストが活躍するシリーズ第3弾。
1992年発表、本邦に訳されたのは2001年のようです。
すっかりはまってしまいました。

イギリス郊外の町デントンでは流感(インフルエンザ)が大流行。デントン署も病欠が頻発。そんな中示し合わせたように事件の災禍が猛威を振るう。誹謗中傷の手紙、行方不明の女子高生、新婚の夫婦に対するいやがらせ、そして連続老女殺害事件。人手不足のデントン署で病気とは無縁のジャック・フロスト警部が勤務超過上等で事件に立ち向かう。

さて今回も事件が次から次に起こり、フロスト警部も読者も休む暇がありません。こういう風に様々な事件が連続して起こるミステリをモジュラー型というそうです。回を重ねるごとに同時進行する事件が増えていくようで、容疑者や目撃者を覚えるのがちょっと大変でした。
相変わらずフロストは軽口と冗談と下ねたを連発しながら、マレットに説教されつつ、超過勤務をいとわず精力的に事件会月に奔走する訳なんですけど、今回の事件はことさら手口が残酷です。メインとなる事件の一つ連続老女殺人事件なのですが、その手口と描写の生々しさがかなりリアル。アメリカはハリウッドのサイコホラーで映画が一本撮れそう。今までの事件ももちろん人が死んだりしている訳だし、残酷ではありましたがフロストの性格もあって読者的には割と楽しく読めたのですが、今回はフロストの軽口を持ってしてもその残酷さを覆い隠しきれない…目撃者や被害者の人生も結構細かく描写されていて、人が殺されるという悲劇とそのやり切れなさを眼前につきつきられているようでした。現代社会で周囲との関係性が希薄になり孤立した老人たちの生活を問題提起しているとまではいいませんが、ひねくれ者の(と私は勝手に思っています)作者のことだから、エンターテインメントとしての小説の中で、それも人の死が面白みの中心的な要素になるミステリ小説の中であえて、人が死ぬということをオブラートに包みながらも紳士に書いているんではなかろうか。ミステリといっても警察小説だから、主題となるのは犯人探しとしても本格のそれとは趣が異なる訳で。また我らがフロスト警部は相も変わらず推理を外しまくる。直感を信じて証拠をねつ造する。このフロスト警部シリーズはもちろん警察小説なのだけど、ほかのそれらとはちょっと違う。もうちょっと事件という現象について焦点をあわせて書かれているようだ。人情小説というのは出はないが、それが(個人レベルの)社会においてどういう意味を持っているのか、というところに面白さがあるような気がしてきた。首をかっ切るという手口は今はもうありふれてさえいるのかもしれないが、私がそれを残酷だと感じたのは、逆説的になるかもだが、この小説が小市民の日常や毎日を丁寧に描写してるからなのかもしれないと思った。

さあそんなことをもちゃもちゃ考える必要もない面白い小説ですので、気になった皆様はぜひ1作目から読んでいただきたい。

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