2013年6月1日土曜日

The Dillinger Escape Plan/One of Us is The Killer


アメリカはニュージャージー州のハードコアバンドThe Dillinger Escape Planの5thアルバム。
The Dillinger Escape Planを初めて知ったのはいつだったろうか。
はっきりと覚えていないが多分ボーカリストがかわった「Miss Machine」が発売された頃だと思う。
それから結構なメンバーチェンジを繰り返してきた彼らだが、上記「Miss Machine」収録の「Panasonic Youth」に吹っ飛ばされて以来、どのアルバムも気に入っている。
前作の「Option Paralysis」からさらにメンバーが変わって、オリジナルメンバーのベンさんと2代目ボーカリストのグレッグさんのほかに新メンバーを2人加えて制作されたようだ。

彼らは日本ではカオティックハードコアと呼ばれることが多い。(ほかにConverge、Cave In、Isisなどがこのジャンルに括られることが多いと思う。)メタルやハードコアをぐしゃっとごちゃ混ぜにした音楽性はまさに混沌という感じだが、どうやらこの呼び方日本独自みたい。WikiなどによるとMathcoreと書いてある。メタルコアの派生ジャンルの一つで複雑な展開や変拍子を多用するジャンルとのことだそうな。

「Miss Machine」からハードコアの攻撃性にメロディアスな叙情性を大胆に取り込んできたが、今までのアルバムはこの言わば静と動のパートが結構きれいに別れていたように思える。ところが本作では2つのパートの境目がいよいよ曖昧になってきており、ブチ切れたようなうるさいパートが全く切れ目なく、妙に怪しいメロディアスなパートに移行している。徹底的な過激さ(ただしあくまでも彼ら流の表現の仕方が踏襲されていて個人的にはとても嬉しい)と徹底したメロディ性。言わば熱湯と冷水のような。このアルバムで面白いのはそのつなぎの部分である。だんだん温度が上がって(もしくは下がって)いくのか、それとも熱湯の後になんの前触れもなく冷水をぶっかけられるのか。この2つの温度変化を見事に使い分けている。そしてまた暖かくもない、冷たくもない部分が秀逸である。おや、と思うととんでもないところに連れ込まれている。いったいどこに連れて行かれるんだ?というまるで迷路のような曲展開。

カオティックハードコアとはなかなかに言い得て妙である。今までに増して混沌性が押しすすめられている。なにがなんだかわからない感である。ちょっと日本の異系のハードコアバンドあぶらだこに似ていると思った。この曲は怒っているな、この曲はちょっと悲しいようだな、というような単一の感想が持ちにくいのだ。感情が希薄というのではない。むしろその逆で過剰に感情的である。だがしかしその感情は簡単に言葉に翻訳できない。もやもやするけど、私にとってはとても気持ちいい。日常生活でただ楽しい、悲しいというのはなかなかない。なんだかわからんが、悲しいような、怒っているようなというもやもやとした私がこのように混沌とした曲を聴く。これだ!これですよ!となるわけである。まあこれは聞き手である私が勝手に思い込んでいる訳なんだけど、こっちの気持ちにばっちりはまってくれるようでとても嬉しいのである。

なんだかわからんごっちゃごっちゃな感情の固まりのような音楽。
これは聴くしかねえぜというような名盤。

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