2013年7月6日土曜日

Converge/Caring and Killing

アメリカのハードコアバンドConvergeのコンピレーションアルバム。
元々はヨーロッパのレーベルLost & Found Recordsから発売された。ただしメンバーはこのレーベルのやり方に不満を持っていたようで(Wikipediaより)、その後元ISISのアーロン・ターナーが自身のレーベルHydra Head Recordsから再度リリースした。それが1997年のこと。しかしその後廃盤に。
2013年もう一度リリースされることになり、リマスターしてさらに1曲を追加。アートワークを前述のアーロンが手がけたデザインで一新。日本ではDaymare Recoringsからリリースされた。ちなみにCDパッケージは日本のここのレーベルからのみリリースとのことです。
コンピレーション版なのでいろんな音源から楽曲がとられています。
内訳は1stアルバム「Halo on Haystack」から8曲(オリジナルは10曲収録。)、完全未発表曲が5曲、スプリットから1曲、デモから2曲。
メンバーも今とは違って、ボーカルのジェイコブとギター(と今や売れっ子プロデューサー)のカートは一緒だけど、ほかのパートは今のメンバーとは別人です。

私は彼らの2ndアルバム「Petitioning the Empty Sky」(いいタイトル。)は持ってます。初めて買ったのが「Jane Doe」だったからイメージが大分違って驚いたのを覚えています。「エモいな!」とおもったものです。でもリリースが1996年だから、所謂その頃(2000年くらいかなあ)はやっていたエモ(やスクリーモ)のむしろ源泉となっているアルバムだったんですね。順序が逆です。その頃流行のバンドがConvergeやその他のオリジネイターたちの影響を受けていたのですね。

さてこのアルバムはさらにその前のアルバムですから、聴いてみるとやはり若いです。
なんならちょっと青い感じです。
音楽性は前述の「Petitioning〜」に通じるところがあります。メタリックな音質のギター
が一般的なハードコアと比べると複雑すぎるリフを奏で、ギロギロしたこれまたメタリックなベースがうねるように絡んできます。ドラムは乾いた音質で重すぎず、曲が完全にメタルっぽくならないようにしているイメージです。ジェイコブのボーカルは悲鳴のようなわめき声でかなり特徴的ですが、中期のカオティック全盛期に比べるとかなり丁寧に歌っています。全体的にかなり叙情的でかなりエモーショナルです。前のめりなギターがメタルバンドにはないラフさがあって、彼らをメタルとハードコアのちょうどバランスのいい狭間に位置させているのだと思います。曲のクオリティは高く、展開も豊富ですがカオスというよりは結構聴かせる印象です。勢い一辺倒でも歌もの一辺倒にもならないあたりがさすがという感じ。

このバンドが今はもう貫禄十分の現Convergeに進化するのかと思うと、ちょっとにわかには信じられないくらいですが、よくよく聴いてみるとなるほど過激で攻撃的な音楽性の中にもきわめてパーソナル感情を込めているのがわかります。個人的には彼らの一番の持ち味は独特の憂いの感情を持っていることだと思います。激烈な音楽性に見て取れる激しさも、どちらかというと前述の悲しみや寂しさといった感情に由来する分、他のバンドにはない説得力が備わっているのではと考えています。「Jane Doe」は本当に捨て曲がない驚異的なアルバムですが、中でも最後のタイトルトラックの威力が凄まじかった。また7thアルバム「Axe to Fall」収録の「Wretched World」も独特の憂いが瘴気のように濃縮された恐ろしいキラーチューンでした。このアルバムではまだまだそれらの楽曲にある濃密さはないですが、繊細ともいえる、ある種強さが強調されるハードコアの中でも異質な要素が要所要所にちりばめられています。

現在の彼らの音楽性を期待すると吃驚すると思いますが、彼らのファンの方々には文句なしでお勧めできるアルバムです。


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