2013年7月14日日曜日

Mouth of the Architect/Dawning


アメリカはオハイオ州デイトンのポストメタル/アトモスフェリック・スラッジメタルバンドの4thアルバム。
2013年にTranslation Loss Recordsからリリースされた。
Neurosis直系のポストメタルバンド。自分で書いといてあれだが、アトモスフェリックってなんだろう?うまく説明できないです。辞書で調べると「雰囲気のある〜」とある。まあ兎に角聴いてくよ、というのは不親切だから、ちょっと自分なりに彼らの音楽性を説明してみると、

  1. 曲の長さはだいたい10分前後と長く、速度は比較的遅め。
  2. ギター、ベースの音は重々しく、間違いなくヘヴィミュージックのそれ。
  3. ボーカルは方向のようなデス声とクリーンな歌声をいいあんばいに混ぜている。
  4. 曲の展開が複雑でメタル然とした激しいパートと静かなパートが渾然一体となっている。
  5. キーボードやシンセサイザーが取り入れられている。

こんな感じ。書いてて思ったがこれだけだとこのバンドだけでなく、この界隈のバンドだいたいすべてのバンドに当てはまっちゃうかもしれない…
それならこのバンドならではの色は?というと「灰色」である。これは私が最初に聴いた彼らのアルバム「Quietly」(3rd)イメージが強い。ジャケットからしてぼやけた灰色一色だったんだけど、その中身の音楽性もこれは見事に灰色の音楽でござった。十分に激しいのに真っ黒じゃない、静かなパートもすばらしいのに真っ白でない。まるで晴れたことのない曇天のような、(私の大好きな)憂いを帯びた、激しい中にもどこかしら寂しさの横溢した素晴らしいものでした。
ここら辺がひょっとしたらアトモスフェリックといわれる由縁かもしれない。ISISにも通じるのだが、結構アートっぽいというか感情剥き出しな割に実は何考えているか分からない、というちょっとひねくれた困った奴らなのである。

さて名作の前作「Quietly」からEP 「Violence Beneath」を挟んでリリースされた今作は、前述のアトモスフェリック感がさらに濃く打ち出されている。だいたいジャケットをみてくれ。明らかにメタルバンドのそれではないではないか。おまけにタイトルは「夜明け」であるからして今回もまた一筋縄ではいかない訳である。
まず全体を通してクリーンボーカルの比重が増えたようだ。日和ったんかい!というとそんなイメージではない。曲は相変わらずのスラッジメタル全開である。じゃあ何よ?というとおそらく曲のクオリティである。もっというと幅である。こういう音楽は一点を突き詰めると研ぎすまされる反面(非常に先鋭化した分)、非常に幅が狭まってしまう。下手すればファンからしても全部同じ曲に聴こえてしまう始末。こうならないよう各バンドが切磋琢磨、苦心惨憺する訳なのだが、このバンドは無理せず(無難という意味ではございません!)非常にナチュラルにクリーンなパートを曲の中に取り込んだのではあるまいか。元々彼らは激しさ一辺倒でならしたバンドではない。激しさと妙に放心したような静けさを同じ曲の中で奏でるという、いうのは簡単だがとても難しい繊細なバランス感覚を持ったバンドであるから、ある意味の水準を次の高見まで引き上げたのである。
バンドが持っている激しさはそのままに、諦観めいた空白・余白が強調されて一曲の中でも見事なコントラスト、そして混じり具合である。前にも書いたが、私は複数の感情が混ざり合ったような気持ちを換気させるような創造物が大好きである。ある種ピュア(単一)ではないのだろうが、現実にあう分(現実が単一の感情で表されることはあり得ないと思う)私の心にびしびし刺さるのである。

この全体に通じる言葉にできない感じは何だろうか。前述した灰色の感じである。はたと思いついた。そうこれは夜明けである。夜が朝になる、あの時間帯である。夜でも朝でもある、そしてどちらでもない、そう反する両者が溶け合った時間である。なるほど!と膝を打った。これは彼らにしか出せない音楽なのだ。

劇的におすすめアルバム。
なかでも私のお気に入り、混沌とした中にも希望を感じさせるような1曲をご紹介。是非聴いてね。

しかし最近は買う音源がことごとく素晴らしくて非常に嬉しいな〜。もっと時間が欲しいよ〜。

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