2014年3月22日土曜日

Full of Hell/Rudiments of Mutilation

アメリカはメリーランド州オーシャンシティのグラインドコア/ハードコアバンドの2ndアルバム。
2013年にA389 Recordingsからリリースされた。
耳慣れないタイトルは「切断の初歩」でよいのだろうか?なんとも不吉なタイトルであることよ。
A389といえばこの間紹介したSeven Sisters of Sleepも所属しているレーベルだから、まあなんとなく音の方も想像できるのではないかと。

ちなみにアーティスト写真がこちら。
かなり人を食ったテイストに彼らのアティチュードが垣間見えるが、意外に素直に自分たちのルーツをさらけ出しているのかもしれない。
左からDarkthrone、Man is the Bastard、Cursed、Pg.99だと思う。
言わずと知れたプリミティブブラック(最近はちょっと違うけど)のレジェンド、パワーバイオレンスの創始者、スラッジいハードコア(実はこの中でCursedはだけは音源を持っていない。)、ダークなハードコアパンクと。
なるほどなるほど。これらのバンドからの流れを汲んでいることは理解できるのだが、このバンドはなんというか偉大なる先達に敬意を払いつつ、それよりさらにぶっ飛んだ音楽性を独自に確立しつつあるようだ。
基本はかなり粗い感じのドゥーム/スラッジメタルの要素を取り込んだハードコアなんだろうが、全編を覆うノイズが半端無い。この手のジャンルはフィードバックノイズと切っても切れないまさしくノイズな音楽性が売りの一つだが、このバンドはノイズ分が非常に過剰である。要するにやり過ぎなのである。ちなみに大好きだよ、私は、そういうのが。

のっけからキーーーンとしたノイズにちょっとくぐもったうめく様な絶叫が乗るという、ちょっとEyehategodの名曲「My Name is God(I Hate you)」を彷彿とさせる(こっちは全編ほぼノイズだが)いやぁな感じのオープニングナンバーから始まる全10曲。1分台の曲もそれなりで、長くても5分に届かないから本当竜巻みたいに終わるのだが、その内容の濃密さといったらない。
ドラムは中音を強調した質で叩きまくるスタイル、ブラストもあるが目まぐるしい曲展開の中で結構叩き分ける様な感じ。スラッジパートでも結構手数が多い。シンバルの連打はある種カタルシスめいた開放感を曲に与えていて気持ちよい。
ベースは硬質でソリッド。ガロンガロン動いていてやっぱりこちらもハードコア由来っぽい。スラッジパートではギターはほぼノイズだからベースがドラムと結構しっかりリズムを刻んでいる。いわばノイジーななかに聴きやすさを作り出している縁の下の力持ち的ポジション。
ギターはメタルに比べると幾らかは軽めの音作りなのだろうが、その分粒子が粗いざらついた音で、やはりハードコアなのか刻むというよりは縦横無尽に弾き散らすスタイル。一番の持ち味はフィードバックノイズでギーギーキーキーズゥオオオオと常人が聴いたらただの騒音じゃねえか、切れ切れと不満を漏らすこと請け合いのその凄まじさといったらない。一部の人にはたまらんよ、これは。
あとは多分ギターとは別にノイズを出している。きゅわきゅわした音や不気味な人の声のサンプリングなども結構効果的に使っている。
ボーカルは呻き、わめきまくるギャーギャーしたボーカルに、前述のMan is the Bastardを彷彿とさせるハードコア由来のふっといドスの利いた低音(ノットデス声)の2種類で畳み掛けるスタイル。ぅげええええっと正しく吐き出す様な不快なスクリームは結構聞き応えあり。あとは余韻を残す様な独特の悲鳴の様なスクリームが個人的にはツボなのでそこら編も非常にグッド。
曲によって、また曲中でも緩急を、それも0か100かの振り切ったスピードを嵐のように使い分けて突っ走るかと思ったら、地獄の様なスラッジパートに沈み込むその目まぐるしさ。なかでもアルバム中一番長い「The Lord is My Light」はほぼ全編圧殺スラッジで悪夢のようにうねりのたくるノイズ地獄は悶絶必死で、一気に加速する(といっても速度はそんなに速くならないのだが、)後半の展開が○。

ノイジーなハードコアというとこの間紹介したNailsがぱっと思い浮かぶけど、あちらは結構カッチリした印象なんだけど、こちらはもっと曲の輪郭が溶けてぐちゃぐちゃになった様なカオス感があってよりおぞましい。
ジャケット通り不愉快な音像で好きな人にはたまらないだろうというとても良いアルバム。
視聴してよかったら買ってみて損はないでしょう。

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