2014年5月31日土曜日

Kayo Dot/Hubardo

アメリカはマサチューセッツ州ボストンの、うーん、アヴァンギャルドメタルバンドの6thアルバム。
いわゆるクラウドファウンディング形式で有志からの投資を募って制作された。2013年にIce Level Records(フロントマンToby Driverのレーベルとのこと)から3枚組レコードとダウンロード形式でリリースされた。私がもっているのは御馴染みDaymare RecordingsからリリースされたCD2枚組の日本語版。

Kayo Dotを知ったのはいつになるだろうか。熱心なファンという訳ではないが、何枚か音源をもっている。確か始めはカオティックハードコアの文脈でバンド名を目にした様な記憶がある。単純な音楽性からするとあまりカオティックハードコアな感じはしないが、なんとなくこのカテゴリーに入れたくなる様な気持ちは分かる。彼らの音楽はなんとも形容しがたいものだからだ。基本はギター、ベース、ドラムのロックバンド体制なのだが、ジャズ風味が結構大胆に入っている。また弦楽器も導入しているからチェンバーロック的な雰囲気もある。多分に実験的で曲によってはドローンっぽいこともやっているようだ。私は今までの音源を聴いてなんとカテゴライズしていいのかちょっと判断がつかなかった。
で、今作は昨年のリリースからやたらと評判が高かった。如何にも私なのだが、リリース自体に気づかなかったから、すでにレコードは完売状態。遅れてリリースされた日本版をゲットしたのだが、これが中々評判通りの出来だった。

全11曲だがアルバムを通して聴くと100分を超える。だいたいどの曲も10分くらいになる計算だ。曲はかなりプログレッシブでとにかくいろんな楽器が使われている。ギター、ベース、ドラム、鍵盤、弦楽器、シンセサイザー。どれも現代ロックではさんざん使われているものたちだ。
また、曲調もロック、メタル、ブラックメタル、ジャズ、フォーク、チェンバーロックと幅広いが、こちらもやはり現代のロックでは異ジャンルとの混交は珍しいことではない。
しかし、このKayo Dotの手にかかるとどうだろう。ごった煮という表現がこんなに似合うバンドも無いかもしれない。曲によって雰囲気が変わる。曲の中でも雰囲気が変わる。イーヴィルなボーカルを中心に添えたブラックメタル然とした疾走パートが飛び出して来たかと思うと、ピアノが突然前に出てくる。ホーンが唸りだす。ギターが轟音で走り出す。地獄の様なギタードローン。ノイズ。これはパレードではないか。めくるめく走馬灯のようだ。全部一緒にやっちゃいました。まるでキメラの様な音楽だが、その接合部のなんと巧みなことか。鵺がそれぞれの要素を保ちつつ、一個の異形として成り立っている様な整合性がある。パート毎はいびつだが、全体で見ればしなやかな体が形成されている。
音楽体験としてみれば不思議な旅みたいなもので、次はどこに連れて行かれるか分からない様な楽しさがあって良い。ロックってここまで出来るぜ!という里程標のような、しかし誰も行けない場所にある、そんな恐ろしいアルバムじゃないの、実は。私はただののんきなリスナーで良かったなあ。

ぱっと聴いてみたところ、結構ブラックメタルの成分が強めに出ていることに驚いたが、何回も聴いているうちに他の要素に気づいてくる。そして各々の要素が抜群に面白い。聴けば聴くほど面白いアルバム。
一番面白かったのはこのアルバムを聴いてもやっぱりKayo Dotの音楽性をなんて呼べば良いのか分からないことだ。それはとても面白いことだ。実験的という言葉はちょっと言い訳めいたずるさを持つに至ったが、このアルバムは実験的の根源的な意味を体現しているように思える。

どうもWikiをみるにJason Byronなる人物の「The Sword of Satan」という物語に則ったコンセプトアルバムらしく、詩の部分は前述のJasonとTobyが共作しているようだ。LPには40ページに及ぶ物語についてのブックレットがついているらしい。そこらへんも読めたら面白いだろうな。

というわけで各所で良い評判だから既に聴いている人は多いだろうが、まだの人は買って聴いてみると良い。何がなんだか分からんが良い、すごいものだと気づくだろう。
非常にオススメです。買おう!

どれも良いがこの曲は良いね!

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