2014年6月15日日曜日

Anathema/Distant Satellites

イギリスはイングランド、リバプールのプログレッシブロックバンドの10thアルバム。
2014年にKscopeからリリースされた。私がもっているのはWard Recordsからリリースされた日本版。
Anathemaは1990年に結成されたバンドで、初期はゴシックなドゥームメタルをプレイしていたが、その音楽性の幅を大きく広げ、曲はよりプログレッシブになり、透明感のある男女のクリーンなボーカルで歌い上げる歌唱スタイル、ストリングスを大胆に取り入れた劇的かつ聴きやすい楽曲をプレイするようになり、日本でも知名度を上げつつ前作「Weather System」はネットの色々なメディアでかなり好意的に評価された様な印象がある。経済評論家の池田信夫さんが2012年のベストアルバム4位に入れててビックリしたり。そんな背景もあって新作にあわせて13年ぶりに日本版も発売されたのがこのアルバムだそうな。
と、まあ偉そうに語っている訳なんだけど、私は過去の楽曲を今のメンバーと音楽性で再構築した編集版「Falling Deeper」をジャケ買いして気に入り、その後リリースされた9thアルバム前述の名盤「Weather Systems」を買った様なにわか中のにわかファンである。

さて今作は基本的に前作からの流れを踏襲したスタイルで、勿論初期のメタル性は皆無。音はどっしりとしたものだが、ギターの音からしてメタルではない。伸びやかで煌めいている感じ。ドラムは堅実に叩き勿論ブラストビートなんかも皆無。ベースも伸びやかなで自由な印象。曲によっては静かなパートでその存在感を目立ち好きズアピールしている。ピアノも結構大胆に取り入れられていて4曲目なんかは前半はピアノ主体で曲が進む。
全体的にあくまでも楽曲のクオリティ焦点が当てられている。執拗な雰囲気作りとでも言おうか。とにかく楽曲のイメージがあってそれを最大限の方法で再現しようという試みがなされているようで、どれか特定の楽器が必要以上に前に出てくることが無い。プログレッシブと言っても技術自慢な部分は皆無なのでそんなに構えて聴くことは無い。とても自然な作りでリラックスして聴ける。しかしこのバンドのすごいのすごいところは何と言ってもその熱い展開ではなかろうか。
男女のボーカルがいて二人とも透明感のあるクリーンに歌い上げるスタイルだが、ややクールな女性ボーカルに対して男性ボーカルは非常に伸びやかで透明感があるものの、何とも言えない力強さがあって、ただ優しいと言ったレベルから楽曲の沸点を一気に上げていく。ボーカルのテンションにあわせて楽曲が大きく立ち上がっていくように盛り上がってくる様はまさにこのバンドの醍醐味で思わず熱い何かがこみ上げてくるという寸法である。オーケストラのストリングスも始終出ずっぱりではなく、ここぞと言うときに投入される訳でこれも中々どうして上手い使い方である。この徐々に盛り上げてくるAnathema節はあざといとは言わないがなかなかずるいと思いつつ、のせられてしまう楽しみがある。特に6曲目自身のバンド名を冠した「Anathema」なんかは比較的静かなバックの演奏陣に熱いボーカルスタイルをのせて、お?と思わせつつそのスタイルでひっぱり後半にかけて爆発させるというスタイルでこのバンドにしては珍しい悲鳴の様なギターソロも格好いい。一転してまろやかなピアノで締めてくるあたりもグッド。

このブログでは珍しく万人にお勧めできるアルバム。
ファンの方ならすでに買っているとは思うので、良質のロックを聴きたい貴方にオススメ。何となく元気になれるアルバム。

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