2014年7月6日日曜日

Eyehategod/Eyehategod

アメリカはルイジアナ州ニューオリンズのスラッジメタルバンドの5thアルバム。
2014年にHousecore Recordsからリリースされた。私がもっているのはボーナストラックが追加された日本版でこちらはDaymare Recordingsからリリースされた。

Eyehategodといえばいわずとしれたスラッジメタルの先駆者バンド。
私が初めて彼らのバンド名を目にしたのは多分中学生か高校生くらいの頃で多分Slipknotのインタビュー目当てに買ったBurrn!に彼らのニューアルバムの広告が乗っていたを見たときだと思う。ご存知の方も多いが、Eyehategodは冒涜的なコラージュが印象的な特徴のある美意識をもっているバンドだから中学生の私としては、計算外のじっとりとした狂気を思わせるアートワーク(例えるならばアメリカの田舎町に住むサイコ男が地下室に溜め込んだお手製のスクラップを思わせる様な不快感。)にどちらかというと嫌悪感を覚えたのを覚えている。バンド名も「Ihategod」にしたら良いのに、とも思った。
(多分)大学生くらいになって彼らの音源を買ったのだが、そのヒリヒリとした攻撃性にかなり衝撃を受けたものだ。音自体はがっちりとしたデスメタルの様な重厚さは無いが、たがが外れてしまった余裕の無さに格好よさとともに恐ろしさも覚えたものだ。
その間ハリケーン・カトリーナがニューオリンズを直撃し、多くの人と同様このバンドメンバーもダメージを負い、(確かBrutal Truthが再結成したのも彼らへの寄付を募るためではなかったかな?)まあまともに音楽を出来る様な状態ではなかったのだろうと思う。それでもOutlaw Orderだったり、Corrections Houseだったりでメンバーが活動し続けて、やっとのことニューアルバムであるから期待も高まろうというもの。

音の方は相変わらず、ピーーという独特のフィードバックノイズにまみれたスラッジメタル。
ザラザラしたギターが沼をかき混ぜる様な遅いリフを抉じるよう奏で、ベースはひたすら重く、対照的に適度な軽さをもってリズムを刻むドラムは手数が多くて気持ちよい。
とにかく弦楽器の”ためる”ようなリフが格好いい。スラッジメタルだから遅くて当たり前なのだが、ただ遅いのではない。要するに遅くすれば良いんだろお前らは、という投げやりな遅さ自慢な感じが全くない。
そして過去のアルバムと一番異なるのがグルーヴ感が圧倒的に増したこと。1曲目の疾走感にはビックリするが、その他の曲でも地は遅いものの疾走するパートを織り交ぜ、遅い一辺倒だけでは内局作りで楽しませる。遅いにしてもとにかくグルーヴィで跳ねる様な曲調がかなり楽しい。これは新しい。始めて買ったのが「Dopesick」だった所為もあるだろうが、とにかく息も出来ない様な緊張感、密室感がすごいバンドだと思っていたのだが、それをある種払拭するかの様なノリがある。勿論明るくなったわけでもポップになった訳でもないのだが、よりブルージィーな側面を増し、曲に深みが出たとも言うべきか。それでいてバンドがもつ陰惨さが損なわれていない。特に9曲目はノイズと不協和音にまみれた恐ろしいスラッジ地獄である。曲に多面性が出た分、得意とする荒涼とした陰惨さが陰影のようにくっきり浮き出した様な印象がある。
詩人でもある(確か詩集をリリースしているはず。)マイク・ウィリアムズのボーカルは相変わらず独特で、ぐえええと絞り出す様なハードコア由来のすごみがあるもので、聴いていると段々これが癖になってくる。やっぱりEyehategodといえばこのボーカル。破滅に向かって一直線に落ちていく様な不安定かつやけっぱちなところがたまらん。

不穏なアルバムだが、聴いていて楽しいという麻薬の様なアルバム。
いかれた、狂っているというのは簡単だけど、そんな簡単なものじゃない、本当に音楽として凝っていて一級品だと思う。狂人の戯れ言がこんなに人を熱狂させるだろうか。
という訳で話題性抜群のこのアルバム、それ以上に中身はすばらしい。まだの人は是非どうぞ。


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