2015年5月10日日曜日

Khmer/Nubes que anuncian tormenta

スペインはマドリードのネオクラストバンドのEP。
2014年にHalo of Flies Records、Tupatutupa、KTC Domestic Productions、Long Legs Long Armsという複数のレーベルから共同でリリースされた。
私が購入したのは日本のLong Legs Long ArmsからリリースされたLPフォーマットのもので、LP自体は茶色に黒のスプラッターが施されたもの。DLクーポンの他にポスターとスペイン語の歌詞とその英訳とさらに和訳がついている。(3LAの並々ならぬ思い入れが感じられる。Khmer結成当時からのレーベルの熱いサポート体制については是非3LAをご覧ください。)
Khmerは4人組のバンドでスペインの伝説的なネオクラストバンドIctus、それから同国でメロデスバンドをやっていたメンバーによって結成されたとの事。結成自体は2012年でいままでにデモとスプリットを1枚ずつリリースしているようだ。
全10曲でEPとはいかにという感じだが、新録音の音源は前半5曲で、後半5曲は前述のデモ音源の再録ということ。当然というかデモはすでに品切れ状態なので嬉しい再録。
タイトル「nubes que anuncian tormenta」はGoogleにぶち込むと「嵐の雲が発表します」。むむむ。ポスターをみると「風雲宣嵐」と書いてある。ジャケットは海の上に付きが浮かぶ荒涼としながらも美しいものだが、付きの周りでは雲が渦巻いている。なるほど。

中身の音の方も嵐の様な出来になっている。ネオクラストということで身構えていたのだが、実際聴いてみると音楽的な区分としてはKhmerはブラッケンドハードコアにとても近いようだ。ブラッケンドハードコアというとその名の通りブラックメタル成分を飲み込んだハードコアで昨今わりと隆盛を見せているジャンルではなかろうか。ただ例えば以前紹介したYoung and in the Wayなんかもこのジャンルだが、それに比べると一線を画す。まずもっとハードコア感が強い。もっというとクラスト感か。クラストは殻とかかさぶたとか言う意味でここで言うクラスト感は身も蓋もない言い方だが粗い感じである。洗練された今風の音というよりはより生々しい音といったらよいだろうか。音質が悪い訳ではなくて、派手な音色や調整でごまかす様なところは感じられない。
のどから絞り出すようにギャアギャアわめくボーカルはなどるほど確かに多分にブラックメタル的である。またトレモロを多用したギターもブラックメタル的ではある。ギュラギュラしたギターリフはメタリックだがメロディアスで嵐のように刻むリフから爆速でトレモロになだれ込むさまがたまらなくカッコいい。ドラムは手数が多くて気持ちよい。デモと最新曲だとスネアの音が結構違う。デモのよりポコポコした音も個人的には気持ちよくて好き。
面白いのはそれらが組み合わさるとブラックメタルの影響は隠しきれなくもありつつ、完全にハードコア然としている。思うに決して明るい楽曲ではないしストイックではあるけど全体的にブラックメタルのイーヴィルさが無い事。音がカラリとしているところがその秘訣ではと。コールドというよりは激情的な熱さがうねっている印象。

さてネオクラストなのでクラストである。ハードコアですよということで勿論音楽を聴いて楽しいのは良いのだが、当然バンドの主義主張というのがどうしても気になってくるもの。そこで嬉しいのが歌詞対訳である。読んでみると特定のだれそれを名指しでどうこうという歌詞からは明確に異なる雰囲気が感じ取れる。それはシンプルな詩情に富んだ極めてストイックなもので、安直な「おまえ」みたいな要素はあまり無い。「俺」を通して個のあり方を問うてくるような男臭いスタイルでまさにハードコアな世界観。

早々に予約完売ってことで(出遅れた私はユニオンで買ったっす。)この界隈では有名な音源なので聴いている人は多いかもですがまだでしたらどうぞ。私もようやっとという感じでネオクラストに足を踏み入れたんだが、中々どうして楽しいジャンルの予感。

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