2015年6月28日日曜日

ドナルド・E・ウェストレイク/バッド・ニュース

アメリカの作家による犯罪小説。
犯罪プロデューサー、ドートマンダー・シリーズの10作目。2001年に発表された。
私は1作目「ホット・ロック」のみ読んだ事がある。この間よんだ「街角の書店」にウェストレイクの作品が収録されていて、やっぱり言いなと思って本書を購入した次第。

犯罪者ジョン・ドートマンダーにある日相棒のケルプから仕事が舞い込む。ネットで知り合った犯罪者ギルダーポストと組み、夜中に墓を暴き、棺桶を入れ替えるというのだ。ケチな盗みに失敗していたドートマンダーはしぶしぶ了承し、墓暴きは無事完了。仕事が完了し二人を亡き者にしようとしたギルダーポストらを見事出し抜き、ドートマンダーらは彼らの計画に無理矢理一枚噛む事に。しかしやはりというか計画は様々な障害に打ち当たり…

犯罪小説である。
すねに傷を持ち世にあぶれた日陰者の犯罪者たちがただただ鐘のために騙し合い、殺し合いを繰り広げる。このシリーズは勿論犯罪者たちが山ほどでてくるし、知力を振り絞って騙し合いを繰り広げるものの殺し合いは出てこない、それどころか派手な暴力沙汰もほぼほぼない(少なくとも私の読んだ2冊では)。
主人公ジョン・ドートマンダーはどこから見てもしょぼくれた中年男である。腕っ節が強い訳でもないし、車の運転も普通。じゃあ一体枯れ葉なんなんだというと、彼は犯罪のプロデューサーである。目的が設定されたと、侵入経路、脱出経路、騙しの手口もろもろを考え、手配するのが彼の仕事である。デカい山であればあるほどやる気が出る。どうみても”絶対不可能”な状況を覆すのがドートマンダーと彼の知略である。大胆かつ繊細で、誰も思いつかなかった様な荒唐無稽なアイディアが飛び出してくることもあれば、逆転の発想でだれもが身近にあるのに見落としていたアイディアを拾って来たりする。その手があったのか!の快感である。
ドートマンダーが陥れようとするものたちも、まあ鐘に目のくらんだ小悪党な訳で全員ろくでもない中で奮闘する中年男ドートマンダー、あくまでも楽天的なケルプは愛すべき犯罪者たちだ。決して正義の味方ではないのだが…

いわばドタバタ犯罪コメディとも言うべきこの小説はしかし、犯罪小説の醍醐味の一つ「完璧な犯罪計画」の部分で突出している。あえて暴力性を排除する事でむしろこっちに特化している。魅力的なキャラクターを配置する事で、暴力性の排除が逃げではなく、むしろ必然的に感じられるのが魅力の一つ。また、結局いい目を見れないドートマンダー一といのも良い目を見たら彼の犯罪人生が終わってしまうという事もあるだろうが、単に様式美(ルパン三世の様な)にとどまらずどこかしら天網恢々粗にして漏らさず、というかたいてい物事は思い通りに運ばないのだ、という説教臭くはないが何となく無常観というのがあって、それでもめげない一面というのがさらにいとおしく感じられるのだ。
楽しい、軽妙な犯罪小説を探している方は是非どうぞ。

ちなみにウェストレイクにはもう一つ「悪党パーカー」シリーズがある。こちらはメル・ギブソン「ペイバック」で映画化されたりしている(映画見た事あるけど原作の事は気にした事無かったな。)人気作で、こちらは容赦ない内容で是非読みたいのだが、絶版状態である事が残念でならない。

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