2015年7月11日土曜日

Iron Monkey/Iron Monkey/Our Problem

イングランドはノッティンガムのスラッジバンドのディスコグラフィー盤。
2009年にEarache Recordsよりリリースされた。
セルフタイトルの1stが1997年、2ndアルバム「Our Problem」が1998年にリリースされている。前者にBlack Sabbathのカバー、後者に日本のChurch of Miseryとのスプリットの音源を追加して一つのパッケージにまとめたもの。ギタリストのライナーも追加されている。(それぞれの音源のインナーも入っているのはとても親切!)
バンドは1994年に結成され、このディスコグラフィーに含まれる2枚のオリジナルアルバム、スプリット音源をリリースし1999年に解散。残念な事にボーカリストのJohnny Morrowは2002年に逝去。(インナーの写真を見るになかなか迫力のある人だ。)再結成は難しいかもしれない。後述するが中々特徴的でまさにバンドの顔と言ったボーカルだもの。
元々スラッジの文脈で良く目にするバンドだったので気になっていたところ、ジャケットもカッコいいし買ってみた次第。

ジャンルとしては至極真っ当な、つまり至極ろくでもないスラッジコアとなっている。紳士の国イギリスのくせに遅い!汚い!うるさい!と三拍子そろった好きな人にはたまらない騒音を鳴らしている。
泥濘感のあるリフを鳴らす、ドゥームメタルの影響も色濃いズルズル感のあるスラッジで遅さを過剰に強調している訳ではなく、ビンテージなロック、あるいはブルースっぽい雰囲気のある跳ねる様なグルーブなリフが曲の主体になっている。スプリットもリリースしたChurch of Miseryにもちょっと通じるところがあると思う。
ギターの音質は質量のあるざらついた音で、水を吸ったサンドバッグのような重さと強靭さと嫌らしさがある感じだ。たまに顔を見せるソロにその影響が色濃く表れるのだが、結構オールドなロック感がある。ただしフィードバックにまみれたその音は正しく汚い。(勿論褒め言葉だ。)低音は迫力があるし、中音域はグルーヴィなリフが映える。鈍足でときおり鳴る不穏なハーモニクスも不愉快さが増す。
ベースは強靭な音でぐっと一本頭からお尻まで突き通した様な感じで曲の背骨となっている。まさに屋台骨と言った感じでこの音が無ければ曲に迫力が圧倒的に足らないのではって位の存在感がある。上手い下手は分からないが何となくこう思った、不思議。
ドラムはこの手のバンドには結構あるが、タスンタスンと結構抜けの良い軽めの音で小気味よい。比較的手数も多いし、遅い曲でやや変則的なリズムで叩くものだから、ドラムラインをなぞるように聴くと大変面白い。もしここまで低音で固めるともはや曲が単調になりすぎてしまうのだと思う。バンドって面白いもので、それぞれが極端には汁よりトータルバランスを考えた方が、曲自体極端かつ映えるものになるのかもしれない。
ボーカルもまさにスラッジな感じでしゃがれて汚いスクリーム。中音かともすると高音二特化してかなり特徴的な声をしている。酔っぱらった様なリズムがあって跳ねる様な曲調と良く合っている。聴きやすさとは無縁の類いの音波でもって憎悪を喚き立てる邪悪なものだ。
曲の尺はだいたい5分〜9分くらい(2ndには20分に迫る曲もあるが)で、牛歩や変にインテリぶったところは無い素直なスラッジメタル。程よい間が強調された曲はとにかく頭を振るのに最適でお酒でも飲んで聴けばさらに気持ちがよいだろう。(私はあまりお酒が飲めない。)とはいえ聞き手のこびたところは皆無で、それはインナーのアートワークを見ればわかるわけで。特に「Our Problem」のそれは稚拙に書かれた下品且つ陰惨な絵でアウトサイダーアートっぽい独特の不快感がある。全体的に酔漢のジョーグめいたところはあるもののよく見れば目は笑っていない類いの油断鳴らないもので、そのユーモアの向こうに彼らの憎悪と本気度が垣間見えるようである。
この手のジャンルが好きな人は買って損する事は絶対無いはず。気になっているんだったら買ってしまいましょう。

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