2015年8月16日日曜日

Chelsea Wolfe/Abyss

アメリカはカリフォルニア州ロサンジェルスのシンガーソングライターの5thアルバム。
2015年にSargent Houseからリリースされた。
前作「Pain is Beauty」から2年という時間でのリリース。個人的には2年って結構あっという間。もう新作?と思ってしまう。嬉しいから良いけど。

前作は印象的なジャケットもそうだけどぼんやりとしつつも結構色彩豊かなサイケデリックなフォークいイメージがあった。今作は黒を基調としたアートワークが示す通り、前作に比べるとちょっと方向性が違うかな?と思った。
1曲目「Carrion Flowers」の不穏かつ低音を強調したノイジーな電子音で幕を開けるこのアルバム。全体的に重苦しく暗くなっている。バンドサウンドはあからさまにノイジーに唸りを挙げるようになり、バンドサウンドが鳴りを潜めるフォーキーな曲は逆に音の数が減り、ドローンめいた電子音が内省的な雰囲気を醸し出している。こう書くと徹頭徹尾内省的で実験的な音になっていそうなもんだが、あくまでも歌が曲の中心にある曲作りの手法は前作と変わらず。今作も妙に浮遊感のある歌声は健在。ため息を吐く様な声に凝縮される色気のある蠱惑的な艶っぽさと、不安定な内面を映し出した様な病的危うさの二面性がある何とも癖のある魅力的な声が何とも独特の世界を作り上げている。
全くこの人の声というのは不思議なもので、幽霊の様なウィスパーボイスはつま弾かれるギターのアルペジオや、霧の様な電子音で構成されるアンビエントな曲調で良く映える。かと思えばいびつなギターが作り出す轟音の世界でも負けない声量と強さでもって耳に突き刺さってくる。暗さを突き詰めつつ静と動、静寂と轟音の両極端をよいっと統べてしまう様な印象があってこれは結構ずるい。なよなよしているのかと思えば蛇の様な執拗さを持っているわけで、これは中々男性にとっては魅力的ではなかろうか。
バックの演奏陣もそんな彼女の声を活かすべく、五月蝿かったり、静かだったりと手の込んだ事をしている。言わずもがなのバンドサウンドにしてもさすがにメタルの持つような重苦しさはありつつも(ドラムの音とか結構重厚)、どこかしらしっとりしたビンテージ感がある。あとはピアノだったりバイオリン?などのストリングス。それからドローンめいた様々な電子音。一見漆黒の闇夜なんだが、目が慣れてくると色々細部にも目がいく様な作りになっている。アルバムタイトル「Abyss」とは確か深淵の意だったと思うが、そんな深淵に深くゆっくり沈み込んでいく様な気持ちよさがある。煌めく水面も気づくと遠く目のない魚たちが泳いでいる中をひた落ちていく様な。

アルバム全体を通して位という共通点はあるものの、曲の作りに結構バリエーションがあるので聴いてて飽きない。個人的にはアルバムトータルで見るとかなり好きだ。一番好きなのは2ndなんだけど、それくらい良いかも。聴けば聴くほど曲の良さに気づく様な気がする。こりゃオススメ。初めて聴く人には良いかもよ。

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