2016年2月20日土曜日

Hoax/Hoax

アメリカはマサチューセッツ州のハードコアバンドのコンピレーションアルバム。
2016年に来日ツアーに会わせて300枚限定でリリースされた。レーベルは不明。恐らく2013年にドイツのAdagio830からリリースされた音源に2曲追加し、歌詞の日本語訳を付けたものだと思う。(アートワークは同じっぽい。)
このHoaxというバンドは2013年に一度解散しているのだが、今回奇跡の来日が決定したとの事。この記事を書いている次点では既にツアーは終了している。私は(例によって)ツアーには行かなかった。お客さん巻き込んだ過激なパフォーマンスが話題を呼んだ色々すごいバンドとの事。youtubeで見たライブの「Fagget」という曲でやられてしまい購入。

この音源のラストの曲は「Sick Punk」というのだがまさにこれがこのバンドを表現している。病んだパンクだ。ストレートが信条のハードコアの中では異色のバンドと言えるかもしれない。鬱屈した怒りをそのまま発散している。鬱病ハードコアというと日本の屍をがぱっと思い浮かぶ。なるほど似通っている部分もあるけどこちらの方がハードコアの土台には乗っている印象だ。
そうなのだ曲自体はバタバタしたドラムが明快なビートを刻むまぎれも無いハードコアなのだが、なぜもこうグルーミィなのか。例えるなら地下室にフラストレーションがたまりにたまっていく様な閉塞感である。爆発前の緊張感で窒息する。
曲はほぼ2分に満たないくらいの尺で速度は基本的には速め。はっきりとしたドラムにうねる様な特徴的なベースがフックのあるビートを作り出して、ざらついたギターがその上で暴れ巻く様な構図。全体的にはまさに飾りっけの無いハードコアパンクである。はずなのだが全体的には墓場に猛スピードで向かっている様な破滅的な焦燥に彩られている。いわばパンクの速度をそのままに数多あるバンドが選択した上の方向ではなく、下の方向に舵を取ったのだろう。
ボーカルはGehennaのそれに似ている部分がある。要するに悪い感じ。彼がグルーミィさの演出に一役以上買っている事は間違いないだろう。吐き捨て型ハードコアか商法の中にちょっとイーヴィルな要素が入り込んだあの感じ。邪悪な企みをにおわせるアジテーションボーカルである。
憎しみをそのまま言葉にした様なストレートな歌詞がいかにも恐ろしい。社会に対する不満というよりは俺とお前の関係で書かれている。そして何より憂鬱で内省的、もっと言えば自己嫌悪に満ち満ちている。殺したいお前が実は俺(自分)なんじゃないか?そういった意味では二重に危ない世界観である。飾らない単語の数々が生々しい。このバンドの暗さを音楽以外でも知る事が出来る和訳は非常にありがたい。

「食い扶持を考えなくても良い事はとても誇りに思っている
 俺は言い訳を手に入れた
 6フィート程の深さの所に」 Sick Punk
なんとも凄まじい歌詞だと思う。(言うまでもなく6フィートは棺を埋める深さ。)

という訳で非常にカッコいい音源!暗いハードコアが好きな人は走って買いにいきましょう。(Baseさんの所によると3月に再発されるらしい。)ライブ行きたかったなあ…。

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