2016年6月18日土曜日

PRURIENT/Unknown Rains

アメリカはニューヨーク州ニューヨークで活動するアーティストのアルバム。何枚目なのかは分からないです、申し訳なす。(リリース多過ぎ問題)
2016年にHospital Productions(なんちゅうレーベル名なんだ)からリリースされた。
言わずと知れた色んな名義で活躍するDominick Fernow氏による一人ノイズ/パワーエレクトロプロジェクトの新作。恥ずかしながら(もう恒例と言っても良いが)リリース自体に気づいていなかったのだが、ぺちゃさんの2016年上半期ベストに入っているのを見てあわてて買った次第。

2015年にリリースされた「Frozen Niagara Falls」は何人の方のその年のベストに入っていた傑作で、私も遅ればせながらデジタル版を購入しその圧倒的な荒廃した風景に圧倒されたものだ。CDだと3枚組トータル90分以上という圧倒的なボリュームだったが、新作である今回の音源は全4曲トータル33分というコンパクトな仕上がり。
音の方も前作とはちょっと印象が違うかなと。大分取っ付きやすい印象。キャッチーと言って良いかもしれない。勿論分かりやすい歌ものになりました!って訳では全然ないのですが。PRURIENTというと非情なインダストリアル/パワーエレクトロ成分とセンチメンタルといってもいい程のドローン/アンビエント成分が融合(曲によってどちらかの局面に大きく振っている事もしばしばだが、アーティストとして振り幅があるという意味でも)しているプロジェクトだと思うのだが、今回は前者のパワーエレクトロ方面が減退し、後者のアンビエント成分が強めに押し出されている。どちらの成分も多分に感情的なのでがらりと印象が変わるというよりは、今回はこっちで振ったのか!という感じ。
ビートのない曲はいわゆるほぼノイズで構成されているのは相変わらずだし、音の方もパワーエレクトロを彷彿とさせるがっつりうるせー系。ただし全体的に見るとどうしようもないノイズの垂れ流しというよりは、ある程度秩序めいたものを志向する作意を感じ取れる。ノイズの音は中音から高音に特化した湿度のあるしっとりとしたものが、渦を巻くように、つまりある程度のミニマル性をこちらが認識できる程度に流れている。雲を見ているとその形が次第に変わっていくように、ずっと見続けていると次第にぼんやりしていくように、まさにそういった幻惑を誘発させる何かを備えている。ただこの雲というのが青空にぽっかり浮かぶそれではなく、点を覆い尽くした分厚い雲の海と言った様相でとにかくに陰鬱な気分にさせる。そこに有るか無きかのメロディめいたものをのせてくる。このメロディも崩壊しつつある美音みたいな使い方でやたらとぼろぼろしていて、それがまた何とも言えない切ない気分にさせてくる。そういえばいつものヤバい叫び声も今回は封印されている。(ぼそぼそつぶやきは入る。)私が持っている音源だとSecret Abuseのノイズと叙情的なメロディのクロスオーバーという観点で似通っている。こちらの方がノイズが本気なのだが。
正しく曇天という感じの音楽で、個人的には特に2曲目「Before Rain Becomes Snow」は本当良いすね。激センチメンタル。

前作がちょっとこってりすぎたな…というかたでも楽しめるのではないでしょうか。切ないノイズが好きな人は是非どうぞ。
ちなみにデジタル版はBoomkatで購入できます。私もこちらで買いました。凝った装丁のカセットは売り切れ状態。(カセットプレイヤーそろそろ欲しい)

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