2016年6月18日土曜日

SUMAC/What One Becomes

アメリカとカナダの混成メンバーからなるスラッジメタルバンドの2ndアルバム。
2016年にThrill Jockey Recordsからリリースされた。
言わずと知れたアトモスフェリックスラッジ(そしてその他のジャンル)の一つ里程標になっているバンド元ISISのフロントマンにして、様々な(変わり種)ハードコア/メタルバンド(にとどまらないけど)の音源を世に送り出したHydra Head Recrodsの首魁Aaron Turnerの新しいバンド。メンバーはベースに元Botch、現Russian CirclesのBrian Cook、BaptistsのドラマーNick Yacyshynという布陣。デビュー作「The Deal」は2015年リリースで、色んなサイトや人の年間ベストにあがる事も多かったですね。来日も果たしてライブもそれは凄まじかったそうな。私は完全に乗り遅れていたので今作で初めて聴きます。プロデュースは売れっ子Kurt Ballou。

AaronのバンドというとMamifferだったりHouse of Low Cultureだったり幾つか音源を持っているのだが、バンドというとやはりISISの印象があるのでそちらと比較してしまう。そうするとかなり音の種類が違うなという感じ。ミニマルさ、という共通点はあるのだけど反復していって外に外に開花していく様なイメージのあったISISと比較するとこちらは圧倒的に内にこもっていく。メンバーは3人だけどそれぞれの主張が極めて激しい。音の広がりとか多様性は最小限なのだが、それぞれが研ぎすまされている、というか重たく過剰に強調されている。スラッジメタルということでそれぞれの音も決して多くはないのだが、それぞれの一撃の音の重みが違う。ドラムは比較的手数が多めなのもカッコいいのだがこの手のジャンルではちょっと不思議かも。ベースは非情に硬質で裏をなぞる、道穴イメージでかなりゴロゴロ言っている。ギター無しでドラムとのアンサンブルだけ聴いたら面白いかもしれない。ギターはほぼほぼ低音のリフをひいていく。人を寄せ付けない音楽性のオアシス、ギターのメロディといったご褒美もあまりなく、巨大な機械が噛み砕いていく様な重圧系の無慈悲なリフが続いていく。だいたいこの手のジャンルだと異常に遅くしたり、ノイズをぶちまけたりとメロディがほぼ死滅していても別の要素でもってキャッチーさを演出していくわけだけど(一番分かりやすいのは衣装もこだわるSunn O)))ですかね)、このバンドに関してはその要素は皆無。非情にストイックで黙々と人を圧殺するような無慈悲なリフを繰り出していく。Aaronのボーカルは終始咆哮している。なかなか特徴的であまり技巧的な使い分けとかはしないものだから、周りの爆音に耳が馬鹿になって来てお経のようにも聴こえる。
もはや聴くのが苦行の様相を呈してきそうなこのバンドなのだが、ミニマルパートが徹底的に研ぎすまされているので呆然として聴いていると時間が経っていたぜ!的な楽しさがあるのが一つ、それから長い曲の中で結構凝った事をやっていて、ボーカル無しのパートだったり、アンビエントなパートを大胆に取り入れているのだがそれが非常にカッコいい。アンビエントパートはクリーンぽいギターがつま弾かれていてちょっとOmっぽい。要するに前述のお経じゃないけど求道的な一面があるように思う。少なくとも激しい音楽である割に暴力を売りにしているバンドではない。勿論インテリぶってもいないわけで、これはストイックさもあって探求者めいていると評しても良いかもしれない。いわば背中で語る音楽性であって、男の子だったらうおおぉぉぉ…とため息まじりに憧れちゃう系の音楽ではあるまいか。

全5曲ででほぼ1時間という、外身も中身もとにかくストイックな音楽だが、そんなに構えなくても楽しく聴けると思う。

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