2016年8月21日日曜日

Fugazi/End Hits

アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のハードコアバンドの5枚目のアルバム。
2016年にDischord Recordsからリリースされた。
「DischordがBandcampに対応した!」と話題になっていたので前々から気になっていたバンドの音源を買ってみる事に。結構伝説的なバンドなので何となく構えてしまう。どのアルバムを買うか迷ったのだけど、なんとなくバンドキャリアで言うと後半のアルバムを買う事にした。Fugaziは1987年に結成されたバンド。中心になったのはIan MacKayeという人物でこの人はハードコア界では知らない人はいないのではなかろうか。Minor Threatの元メンバーで(恥ずかしながら聴いた事ないです。)、酒飲まない、タバコすわない、愛のないセックスはしない(間違ってたらすみません)という厳格なスローガンを掲げるストレート・エッジ思想の提唱者。前述のMinor Threat解散後結成され、物販を行わない、モッシュを禁止などハードコアのみならずアンダーグラウンド音楽業界としてはかなり異色のスタイルで持った活動したバンド。(ここら辺のエピソードが興味深いので上手くまとめた本などのメディアがあったら教えていただきたいところです。)
よくよく考えてみると私は煙草は吸わないし、お酒も(好きだけど弱いので)あまり飲まない、セックスは(愛の有無にかかわらずすごくしたいのだが)全然出来ないので、ある意味ストレート・エッジである可能性があるのでこの機会に聴いてみた。

私は軽薄な音楽消費者なのでハードコアにしてもパワーバイオレンス!クラスト!など完全に流行の最先端の尻馬に乗っかるタイプ。ルーツをほってみようという熱心なファンではないので、(ハードコアに限らないけど)伝説的なバンドであっても聴いてこなかった。なんとなくFugaziというと荒々しいストレートなハードコアだと思っていたから、再生した瞬間かなり驚いた。別のバンドの音源なのかとおもったくらい。
ハードコア(音楽)というとストレートかつシンプル、直情的でがなり立てるボーカルに代表されるその音楽性はまずもって過激、という認識なのだけど、このFugaziはのっけから(1曲目「Break」)複雑なリズム、ディストーションのむしろあまりかかっていないクリーンな凝ったリフを奏でるギター、ジャズのような技巧を見せるベースのアンサンブルがゆったりとした曲を演奏する。ゆったりとしながらも複雑さを感じる曲で、難解とはいわないし、メタルの様なかっちりとした装飾性に富んだ様式美はかんじられないのだが、なんとも一筋縄では行かない。少なくともハードコア然とした粗野な五月蝿さとは無縁だ。あっけにとられる2曲目「Place Position」ではボーカルが圧倒的な存在感を見せてくる。思っていたより高い声でちょっとビブラートがかかっているように不安定に震えるそれはちょっとJello Biafraに似てると思った。曲の方は相変わらず複雑怪奇にその枝葉をのばし、曲中に大胆なブレークを入れてくる。ハードコアの枠からは完全にはみ出しているぞと呆然としていると3曲目「Recap Modotti」が始まる。シンプルにビートを叩くドラムに、やはりリズムと渾然一体になりつつも良く動くベースが絡む、チリチリしたノイズからギターが入るがやはりそのトーンはクリアだ。ボーカルは何かを待っているかのように抑えたトーンで詩を読んでいく。なにかあるという焦燥をはらむ緊張感がたまらない。オフビートと言っても良いが中盤以降徐々にテンションを挙げてくる。緊張感の中にも伸びやかさが横溢している事に気がつく。私はこの3曲目でやっとなんとなく、このFugaziというバンドがおぼろげながらも見えて来た様な気がした。とにかくこの3曲は自分の不勉強もあって衝撃的だった。し、とても面白かった。
Fugaziの音楽性はポストハードコアに分類されるらしい。また初期の作品は大分ハードコアらしいアプローチで作成されたとの事。その後ハードコアにとどまらない音楽性を模索し、それが別のジャンルという事で結実したのがこのアルバム、ということだ。
全体的に速度を落とした気怠い雰囲気の中に、フリーキーで反復的な音楽が伸びやかにつめられている。隙間が結構空いているので油断しがちだが、前述の「Recap Modotti」のように実は緊張感が満ち満ちている。いわばFugaziの間合いであって、その思想もあって殺気というのはあれだろうが、この空間にはいると完全に異界に持っていかれる。

「実は未だ…」という人は是非どうぞ。実はあまり構えなくてもただ聴いてみる、という感じでも良いのではなかろうか。結構ビックリすると思います。


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