2016年8月28日日曜日

ZAZEN BOYS/すとーりーず

日本のオルタナティブロックバンドの5枚目のアルバム。
2012年に自身のレーベルマツリスタジオからリリースされた。
私が買ったのはデジタル版でボーナストラックが1曲追加された全部で12曲。
ZAZEN BOYSといえば向井秀徳さんであり、向井さんといえばNumber Girlであろう。いうまでもなく日本のオルタナティブロックバンドであり、その影響は大変大きいのではなかろうか。私はばっちりその世代であり、MutomaJapanで「透明少女」のMVを見て以来のファン。思春期にありがちな「邦楽はクソ」時代でもその例外になっていたもの。さすがに同級生みんな聴いてたとはいわないが音楽好きな人ならNumber Girlかスーパーカーのいずれか、あるいは両方を聴いていた。
Number Girlは2002年に解散。その後ギターボーカルを勤めたフロントマン向井さんが組んだのがこのZAZEN BOYS。Number Girlの幽霊を追い求める私はチラチラ聴いたものの、Number Girlとの方向性の違い(これもちゃんと聴いていないから適当な判断なんだけど)とそれを「わからない(理解できない)…」と認めるのが怖かったのかちゃんと作品を聴く事はなかった。今回たまたま視聴した楽曲がかっこ良くて本当に何となく買ってみた。

Number Girlは何ともいえない衝動(よく性的衝動という歌詞が出てくる)を焦燥感のあるキャリキャリギュンギュンしたギターにこめて打ち出した音楽でなんとなく全体的に青春の目のくらむ様な青い感じがあった。後期は歌詞がその青さを脱して念仏的になり、ラップを大胆に取り入れたりとその形を買えていったものの根底はやはり轟音ギターロックであった。
ZAZEN BOYSはそんな後期のNumber Girlの特異な要素を抽出して突き詰めた様な音楽性という事が出来るかもしれない。ただし音楽性はかなり異なる。恐らくファンクだったり、プログレッシブだったりするのだろうが私はその方面全く明るくないので、何を言っても知ったかぶりになってしまう。なんとか自分なりの感想を述べていきたい。
まず全体的に音色は明るく明快。楽器陣はドラム、ベース、ギターそしてキーボード(シンセサイザー)でそれぞれの出す音は非常にクリアで乾いていて分かりやすい。弦楽隊の音は適度に歪ませて入るのだろうが、基本最低限という感じでクリーントーンが主役。恐らくメンバー全員がとてつもないテクニックの持ち主なのだろう。これらが比較的短い曲の中にぎゅっとまとめられている。全曲そうだといえないのだが、一つの指向性としてリズムが非常に重視されており、曲によってはほぼリズムで構成されている。変な言い方だが、全部の楽器がぶっちり千切れており、それを一子の狂いもなく打ち出してくる。曲を聴くのが手っ取り早いのだが、すごく乱暴にいうとギター、ベース、そして曲によってはボーカルをドラムとシンクロさせて曲が進んでいく感じ。普通曲は始まりと終りが当て、曲によっては展開はありつつも主題というか特定の(複数の)リフを反復させていくのだと思うが、ZAZEN BOYSはこのリフが極めてシンプル。確かな技巧でもって相当難しい事をやっているのだろうが、出す音は一見シンプルで最低限だ。(例えば超絶技巧のスラップまくりや超速弾なんてのは皆無。)ただこれはどれかがずれるととてもかっこわるいのだが、どれもぴたりと合っている。(ちなみにライブ動画を見てもぴたりと合っている。)これによくわからない歌詞が乗ってくるのだが、曲が進んでくると(多分)リズムが意図的に変更されていて分け分からなくなる。で反復的な歌詞もわざと順番を買えて変なくっつけ方でのせて来たりする。(曲でいうと「ポテトサラダ」とか)この計算された混乱ぶりが大変面白い。なるほど曲によってはいわゆるポップ性は希薄だが、リズムが強調されているので「難解過ぎてわからない」ということにはならないと思う。「よくわからなくてスゲエ」のだが正座して拝聴します、といった類いのものではなくとても肉体的。
と、こんな感じなのだが私このアルバムの「はあとぶれいく」という曲が本当に気に入ってしまった。この曲は多分このアルバムの中で一番分かりやすい(敢えていうと一番Number Girlっぽい)のだが、(これも多分)展開が逆に酷く単調でほぼ一本調子に進むのだが、そこに乗る歌が非常にエモーショナル。歌詞もよくよく読むとどうもおかしく精神のバランスを損なっている気がする。あまりこんな事いうのは好きじゃないのだが(最上級をいっぱい使ったら当然その価値がないので)かなり、最高ってやつだ。
中でもこうだ。
「いつか悪魔と対決する日を待っている
 惰眠を貪り食っている
 悪魔が来るのを待っている」
悪魔を待っているのだ。私もだいたいそう思っている節がある。悪魔なんていないのだ。もしいるにしても倒しにいかないで昼寝して待っている。くるはずがないのを分かっているのだ。卑怯な心だ。この何ともいえない駄目さ、これがとんでもなく心に刺さるのだ。向井さんはこういう歌詞を書かない様な気がしていたからちょっと驚いた。本当にこの曲ばかり聴いている。他の曲も良いのだけど、この曲だけでも「すとーりーず」というアルバムを買って良かったと思う。こんな曲に出会えることは中々ない。ちなみに「はあとぶれいく」の他にも意外にメロディアスな曲はあるのでご安心ください。
という訳で個人的には大変良いアルバム。もし興味が出て来た!って人がいたら是非どうぞ。
リズムの塊「ポテトサラダ」。

こちらはZAZEN BOYSではないのだけど「はあとぶれいく」。最高。

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