2016年9月10日土曜日

khost/Corrosive Shroud

イギリスはバーミンガムのドゥームメタルバンドの2ndアルバム。
2014年に同郷のレーベルCold Springからリリースされた。
この間買った漫画ドロヘドロのサウンドトラックのDisc1の1曲目を飾ったのがこちらのバンド。独特でとてもかっこ良かったのでフルアルバムをBandcampで購入。
2013年に結成されたバンドで、バンド名はすべて小文字。アフガニスタンにそういった州があるらしいが、もしかしたらghostのスペルをもじったのではと。前者なら「ホウスト」、後者なら「コースト」と読むのかもしれない。Andy SwanとDamian Bannettからなる2人組で結成は最近だが、2人とも色々なバンドを経験して来たベテラン。AndyはJesu、GODFLESHのJustin K. Broadrickとバンドを組んでいた事もあるそうな。私は多分Andyが参加しているIrohaというバンドの音源を持っていると思う。Damianの方もTechno Animaslに参加していた事もあるという事でJustin繋がり。

「腐食性の覆い」と銘打たれたこのアルバムは既存のいくつかの音楽的要素を組み合わせて全く新しい音楽を想像している。音的にはとてつもなくヘヴィなインダストリアル・ドゥームという事になると思う。自分達自身ではその音楽性を「Experimental Metal」という言葉で表現している。
激烈にダウンチューニングされた7弦ギターが重苦しいリフを牛歩で引きずり回し、ソリッドなドラムが金属的な響きを牛歩でもって響かせる。そこにお経の様な陰鬱なボーカルが妙な節で歌をのせる。
これだけ書くと相当五月蝿く、相当音の数が多いメタルという結果に陥りそうだが、そこは引き算の美学で持ってまずドゥームという様式をとる事、それから意図的にそれぞれの個性が引き立つように余計な教唆物をがっつり減らしている。音に広がりがあるので圧倒されるのだが、よくよく聴いてみると使われている音の数はそこまで多くない。ただし一番強烈なのはやはりギターとベースだが、一つ一つの音がとんでもなくでかい。本人も「ほぼベース」というギターはあまりに低音でノイズで輪郭がぶわぶわ撓んでいる。確かにドローン要素も多分にあって例えばSunn o)))みたいにがろーっと空間的に広げる感じは確かに似ているのだが、あちらが圧倒的な重量を持ちながらも拡散していくのに対し、こちらはもう少しソリッドで金属的。拡散しがちな奔放さをぎゅっと引き締めてまとめあげる力が働いている。要するにそこを担当しているのがインダストリアル成分ってことなのだろうが、ここら辺の音もよくコントロールされている印象で凶暴で退廃的な景色の背景に冷静な知性を感じさせる。
厚い雲に覆われた空の下で油に覆われた海をその背に訳の分からない機械をのせた巨大な無人のタンカーがのったりこちらに向かってくる様な、そんな雰囲気がある。無機質なビートに(負の)感情的なボーカルを乗せる事で剛と柔をうまく融合させたありそうでないとても良いバランスを完成させている。

荒廃しまくった音にビックリする事請け合いなんだが、よくよく聴くとそれらは大変よく練られたものだと分かる。ベテランらしいいろいろな音楽的背景の遍歴が垣間見えるようだ。とてもかっこ良い。幅の広いJustinの音が好きな人ならきっと気に入ると思う。
ドロヘドロのサントラのリリース元のインタビューは大変有益なので合わせて是非どうぞ。

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