2016年9月25日日曜日

Orchid/Gatefold

アメリカマサチューセッツ州アマーストのハードコアバンドの3rdアルバム。
2001年にEbulltion Recordsからリリースされた。
このバンドは元々タイトルがつけられなかったのだが、リリースした際の形式がゲートフォールドだったのでその名前がアルバムになったらしい。面白い。あぶらだこみたい。
1992年に結成されこのアルバムを含め3枚、その他音源をリリースの後2002年には解散している。
激情ハードコアを語る上で重要なバンドという事で前回感想を書いたYaphet Kotto(とそれからPortrait of Past)と合わせて購入した。

さてYaphet Kottoが轟音ギターに文学青年的な青臭く”弱さ”のあるボーカルが負けじと声を張り上げて哀愁のメロディーを歌い上げるというまさに「エモ」それも「スクリーモ」の萌芽を感じさせる抒情的なバンドだったのに対し、同じジャンルや文脈で語られるこのOrchidというバンドは大分異なったアプローチでジャンルの形成に一役を買ったようだ。
バンドサウンドを前面に出した五月蝿いギターロックという材料は共通するものの(ただしこちらは録音状態がYaphet Kottoに比べるとクリアだ。が向こうは1st、こちらは3rdということも加味しないと。)、ざっくりいってこちらは速くてより暴力的だ。
まず1曲が非常に短い。例外的に似2分を越える曲が幾つかあるものの、19曲で24分と平均すると1分そこらで、だいたいの曲は60秒以下である。そしてボーカルはほとんど叫びっ放しでクリーンを使い分けるものの割合は少なめ。叫ぶといってもエフェクトも一切かけないし、独特の歌唱法で持って低音または高音を強調している訳ではない。気持ちが乗りすぎた結果叫びだした、という感じ。多分にナイーブでそういった意味ではYaphet Kottoと共通点がなくもない。ざっと歌詞に目を通してみると社会への不満をぶちまけ、自己改革をアジテートするプロテストとしてのハードコアパンクというよりは、自己の内面に切り込みそれを吐露する(ハードコア界隈ではエモーショナル、つまり女々しいと揶揄する事もあっただろう)スタイルのもの。思春期の悩みという訳ではないのだが、この叫んでいるやつは俺と同じ世界にいるのだな、と感じさせるその身近さがある。
この速く叫び立てる演奏スタイルはグラインドコアかパワーバイオレンスか?然りであって本当にグラインドコアにカテゴライズされる事もあるみたい。ただ個人的にはやっぱりちょっと違うと思う。まずは多分に感情的であること。特定の感情に特化した無慈悲さが感じられず、かわりにもっと迷いのあるサウンドが展開されている。その迷いは、なんとも憂いのあるクリーンボーカル、短い曲の中にも印象的なアコースティックなパートを入れたり、ノイズを入れたりという敢えての複雑さが導入されている事。エクストリームミュージックは求道的な世界なので、そこでは時に余計な感情がこぼれ落ちてしまう。それらをこぼさないように、でも全速力で突っ走るとこのOrchidと彼らが作る音楽が生まれるのだろう。
彼らの音楽はエモバイオレンス(Emo-Violence)と呼ばれる。文字通り音楽としてのエモとパワーバイオレンス(パンクより激音へのアプローチ)がクロスオーバーした音楽の事だ。なるほど。スクリーモとも呼ばれることもあるが、地下を抜け出して商業化された(同時に洗練されている訳で例えば入門的な意味もあっただろうから一様に(悪い意味で)セルアウトしたとは個人的には思わない。)スクリーモとは明確に違うからやっぱりエモバイオレンスの方がしっくり来る。

昨今流行のブルータルではないパワーバイオレンスを聴きたい人は是非どうぞ。溢れ出した感情がどうにもならない感じの音楽。オススメ。

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