2016年12月31日土曜日

Martyrdöd/List

スウェーデンはヴェストラ・イェータランド県ヨーテボリのクラストパンクバンドの6thアルバム。
2016年にSouthern Lord Recordsからリリースされた。
Martyrdödは2001年に結成されたバンドでメンバーチェンジを経て今までに5枚のアルバムをリリースしてきてた。今は4人体制とのこと。私はTwitterで今回の新作のリリースの盛り上がりで初めて知ったので過去作を聞いたことはない。どうも日本の特定の人たちの間ではかなり有名なバンドのようだ。

いわゆる”ブラッケンド”という形容詞がつくクラストパンク/ハードコアバンドで、アングラ界隈で昨今隆盛を見せるジャンルの一つ。6枚のフルアルバムをリリースしているから先行者ということにはなるのかもしれない。
全部で10曲が36分、平均3分台なのでハードコアにしても速さを売りにしているバンドでないことがわかる。じっくり聴かせる、というと語弊があるかもしれないがとにかく叙情的なバンド。別にボーカルがしっとり歌い上げるわけではない。つまりクリーンボーカルは皆無で、どうしようもないクラストボーカルが綺麗とはお世辞にも言えないしゃがれたダミ声で、メロディ性のあまり感じられないシャウトをかましていく。じゃあ何が叙情的なのかというとギターがひたすらメロい。メロすぎるほどにメロい。ほぼほぼ途切れなく弾きまくっていくハードコア/ブラックメタルスタイルで、音が非常にクリアかつきれいに仕上げられており、高音でキラキラ装飾されたトレモロリフが極めて滑らかに(ここ結構大切)メロディ成分を曲にバンバン追加していく。どうしても「俺らハードコアだからさ…」となりがちな男の虚栄心(テキトー言ってますよ)がサウンドの一片一片までも小汚くしようとしてしまい、それすらも男らしさの象徴として賞賛されがちなこの界隈で、ここまで思い切ってハードコアにあってはいけない”綺麗”さをしれっと表現仕切ってしまうとは、まさにその姿勢がハードコアスピリッツに溢れているのかもしれない。ギターソロもかなり泣いてきてその思い切りの良さはもう凄まじいものがある。
こうなってしまうともう何かによって心が洗われてしまったブラックゲイズのようなサウンドになるんでないの?って気もするがこのバンドはそれでもどっからどう見てもハードコアだ、と思わせるからさらにすごい。なぜかというとギター以外は余り美麗な方向に引っ張られていない。前述のボーカルはそうだし、また特にドラムとベースが担当するビートの部分は明確にハードコアだ。重たいドラムを回すようにロールさせたり、ズタタズタタと重さとリズムの小気味好い気持ち良さを併せ持ったD-ビートを明確に曲の根幹に据えているので「俺たちハードコアです」と問答無用にぶっといビートで持って聞き手の顔面に叩きつけてくる。
音楽で何かの要素をブレンドするときどうしても両者を程よく接近させる手法が一番手っ取り早いのだろうが、このバンドに関してはハードコアはハードコア!、ブラッケンドはブラッケンド(つまりギター)!と明確に線を引いてそれをハードコアという土台の中で両立させているからすごい。溢れんばかりの叙情性というとTotem Skinに似ているが、激情っぽいTotem Skinに比べてこちらは明確にクラストという感じなので似ているところもあれば違うところもある。

賛否両論の新作ということだが、私は前述の通りこの作品で初めてこのバンドに触れたので素直にいいな〜と思ってしまった。実のところ過去作を聞いた上で今作に否定的な意見こそ聴きたいなと思ったしまったりもする。
叙情的なハードコアなんて手垢のついた表現かもしれないがいつの時代も言葉で説明仕切ることができない音楽をやっている人たちがいるものだ。ぜひどうぞ。非常にかっこいいおすすめ盤です。

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