2017年1月15日日曜日

Nothing/Joy Opposites Japan Tour2017@渋谷The Game

アメリカはペンシルバニア州フィラデルフィアのロックバンドnothingが来日するというのでライブに行ってきた。
Nothingは音楽的にはシューゲイザー/インディーロックのカテゴリに括られるのだろうが、レーベルはアメリカのエキストリームメタルをメインに取り扱う(それ以外にも幅広いけど)Relapse Records(その前はさらにハードコアなA389からも音源を出している。)というちょっと変わったバンド。もともとカオティック・ハードコアの巨星ConvergeのフロントマンJacobが主催するDeathwishからも音源をリリースしたことのあるハードコア界隈出身のDomenic Palermoが始めたバンドでハードコアを経由したうるさいシューゲイザーをプレイしている。今までに2枚のアルバムをリリースしており、私は両方のアルバムを大変愛聴している。ライブが見たいバンドだったのでこの来日公演は非常に楽しみだった。
場所は渋谷The Game。初めて行ったが比較的新しいライブハウスだと思う。2階にあるし、全面禁煙で綺麗。奥行きはそこまでないがステージも含めて横に広い感じ。18時過ぎごろに到着。ちなみにNothing以外には3バンド出るのだが一つも知らないし、予習もしなかった。

December
1番手は日本人3人組のポストロック。ボーカルレスのインストバンドでギターは椅子に座っているし、ベースの前にあるのはシンセサイザーかと思ったら(多分)鉄琴、ドラムは先端に丸ぽちゃのついたスティックを使ったりと色々とこだわりの感じられるバンド。
始まってみると堅実なリズム隊が土台を作り、その上にまさにシューゲイズなギター(エフェクターの量が結構えげつないことになっていた)が乗っかる。このギターは様々なエフェクトを駆使するのだが、基本的にリバーブがかかって奥行きのある音作りがされており、それが細かいトレモロを奏でていく。リフを反復的に繰り返していくわけではなく、もっと自由にメロディを奏でていく。そういった意味では非常に饒舌でメロディアス。同じく日本のArchaique Smileに通じるところがある。高音主体のトレモロが奏でる音は非常に美麗で温かみがあり、シューゲイザーでありながらポストロックの影響色濃い。
最後はギタリストが立ち上がってちょっとMogwaiの「Glasgow Mega-Snake」っぽい低音を押し出した激しい曲で締め。

The Florist
続いてオシャレで若いメンバーによる4人編成のロックバンド、The Florist。
FloristというとAnal Cuntが思い浮かぶのは会場で私一人だけだったのではなかろうか(というくらいの雰囲気でした)。
何と言っても透明感がありつつも甘いボーカルが特徴的な王道シューゲイザーを演奏するロックバンド。単音が意識されたギターがとにかくキラキラしている。ドリーミィかつ爽やかでまさに陽性のたたずまい。光がブワーってなるような光というよりはきらめき感のある感じ。インディーロックよりはうるさ目の音像で音の数はもっと多めだが、音でか目のライブということを考慮しても暴力的なところは皆無。シューゲイザーというと内省的でオタクっぽいから、結構そう言った意味では独自の世界観を構築しているバンドだなと。

Joy Opposites
転換の時にメンバーをみると明らかにいかつい。メンバーの一人は顎髭も逞しい外国の方でAlice in Chainsのシャツを着たドラマーには刺青入っている。「これはちょっと違う感じ」と思っていたけど、演奏が始まると果たしてシューゲイザー感はほぼ全くない。日本側のヘッドライナーなので予想を裏切られる感じ。とにかくオルタナティブっぽい。ほとんど装飾性のないギター、ベース、ドラム。リズム感が強烈に意識されたざらついた音質のギターが無愛想に重ねていくリフなんかはあの頃のオルタナ感がある。顎髭の方がメインボーカルなのだが、見た目に反して声が透き通っていて若い。ちょっと少年ぽさもあってそれが大変魅力になっていると思う。少年ぽいと言ってもシューゲイザーバンドのそれのようなあざとさはなくて、まさにオルタナといった風の無骨な中にもメロディーが溶け込んだ”歌”を軽快に飛ばしていく。2本のギターとベースの3人のフロントがみんな声を出していってここから生まれるコーラスはなかなか迫力がある。

Nothing
トリはNothing。写真で見てたからある程度は分かっていたけど実際にメンバーを見ると刺青もがっつり入っているしかなりいかつい。結構リラックスした様子でほとんどの機材を総とっかえしていた。ギターの二人はアンプが小さくてびっくり。こういったバンドのアンプは大きくなっていくものだと思っていた。二人いるギタリストは片方エフェクター少なめ(3つかな?)、もう一方多め。
転換終わって一度引っ込んだメンバーがのらーっと出てくる。ベースの人はT-シャツがDropdeadだ!彼は動きも一番ハードコアしてた。
音が出てくるとNothingだ。この日のイベントに出てたどのバンドとも確実に種類が違う。結構シューゲイザーの要素は強くて特に中音域に反響を伴って伸びていく音なんかはMy Bloody Valentineからのこの手の音の影響を感じさせた。何より”気怠さ”に溢れている。ただこの気怠さが曲者で例えば前述のMy Bloody Valentineの文学的・耽美的なそれとは違う。もっと俗っぽい「飽きちまったな」という感じ。それもむさい男の「飽きた」なのである。フロントマンDomenicはどうやら前科もあるらしいし、そういった意味ではマジでダメ男だ。そして去年出た新作のタイトルは「明日に飽きちまった」だ。連綿と続く毎日が明日も来ることに嫌気がさしている。差し迫った退屈と厭世観、それがハードコアを経由した暴力的なノイズに現れている。どちらかというと複雑さというよりは勢いと音のデカさで表現されたような強烈なノイズはやはり独特だ。シューゲイザーのオルタナティブではあっても往年のオルタナティブ・ロック(メタル)感はあまり感じられない。そこはやはりハードコアの影響色濃いのでは。冗長なポスト感も一切なし。実際目の前で見て聴いていて懐が広いというか、結構形容しがたいバンドだと思った。ただやはり俗っぽいというのが一つのキーワードで、天上の音のように形容されることもあるシューゲイザー/ポストロックに唾を吐きかけるような生活感があって、それがむしろ私のように「妙なる調べ」に勝手に拒絶されているように感じる卑屈な男にとっては救いになるのだ。憂さ晴らしだと言わんばかりに暴れるノイズが本当に胸に染み込むのだ。
セットリストは2つのアルバムから満遍なくで初めは戸惑った「Vertigo Flower」もライブで聴くとあれれ?と思うほどよかった。「Dig」、「Eaten By Worms」などNothingの暗さを感じさせる激しめの曲もやってくれたので嬉しかった。(個人的にはやっぱり「guilty of Everything」も聴きたかったな。)
1曲終わると間を挟んでいくスタイルでとにかくマイペース。フロントマンDomenic以外はほぼ喋らないのだが、当のDomenicも饒舌ではないし、喋っても「アリガトゥ」以外はほぼ英語。ウーロンハイやストロングゼロに拍手させたり、「飽きたな…」といったり(新作と絡めてのことだと思うけど)、メンバーと英語で会話し出したり。フロアに降りて座ってギターを弾いたりで自由で飄々としている。極め付けは最前の客をステージにあげてスマホで動画を撮らせ出した。これは面白かったな。ちなみに取り終わった後スマホをぞんざいに放り投げてた。
しかし演奏はやはり暴力的。ドラムのペダルが壊れ(ちなみに転換の時もそうだったがドラマーはスタッフから機材を受け取るごとにぺこりとお礼をして礼儀正しい人でした。)、ベースのストラップが切れるくらい。ほぼ音源に忠実な演奏だったがノイズは多めで単純に音がでかくて本当かっこよかった。バカみたいな感想だが、家帰って音源聴くと迫力が違った。ただ暴力的といってもそれ完全に表現の中だけであって、元ハードコアということで元ヤンキーみたいな怖さがあるかなと思ったら、完全にもうその過去は清濁合わせて飲み込んだという余裕が感じられた。完全に過去を消化しきって新しい音の模索を始めているのがNothingなのだなと。

新作に関連したマーチはかっこいいのが多かったので期待していたのだが、売れてしまったのかこの日はそんなに種類がなかった。クソカッコイイロングT-シャツを買って帰る。

Nothingは本当にかっこよかった。とにかくずっと見たかったから招聘してくれたIce Grillsさんには感謝しかない。ありがとうございました。

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