2017年2月26日日曜日

kamomekamome/BEDSIDE DONORS

日本は千葉県柏市のハードコアバンドの4thアルバム。
2013年にIkki Not Deadからリリースされた。
ヌンチャクのボーカリスト向さんがヌンチャク解散後の2002年に結成したバンド。かなりテクニカルなハードコアと聞いてなんとなくビビっていた印象がある。2ndアルバム「ルガーシーガル」のみいつどこで買ってのか覚えていないが持っている。非常に叙情的な「クワイエットが呼んでいる」という曲が好き。それくらいの関わり方だったのだがこの間新代田Feverで見たライブがとても楽しく、私ほほとんど曲を知らないにもかかわらず盛り上がったので、恥ずかしながらライブ終演後物販で買ったのがこのCD。

とにかくライブが楽しかった。激しいんだけどみんな楽しそうだった。印象的だったのはとにかく客が向さんと一緒に声を張り上げて歌う。当たらめて目下の最新作であるこのアルバムを聴くと歌が強調されたバンドだと思う。ライブでもそうだったが、向さんの野太い咆哮とそれを補う様なベースの中瀬さんの甲高いスクリームが掛け合う激しいハードコアパートと、一転してメロディアスなクリーンパート。エモというのは簡単だが、この隠しようもない叙情的な完成と激しさと歌メロのくっきりさはどちらかというとPoison the Wellにちょっと似ている。感情が高ぶってきて叫んでしまう激情やスクリーモとは一線を隠している様に思える。クリーンパートはキャッチーで思わず歌ってしまう気持ちがよくわかる。これは基本全て日本語で書かれた歌詞もあるだろうし(向さんの書く歌詞はどこか変わっていて妙に具体的に一部の場面を切り取った様だが、言葉は抽象的で顔が具体的に思い浮かばない匿名性がある非常に面白いもの)、何より日本語ロックの影響が強くてよく日本人に馴染むのではなかろうか。クリーンパートには時間を割いて撮ってつけたメロディアスさだったり、激しさが落ち込む先としてのみ機能するサビ(つまり激しいパートがつまらない)としてのみ使っていないところが面白い。曲によってはかなりクリーン主体で進行することもある。
演奏の方は流石に凝っていてツインギターをこれでもかというくらい活かした重低音を効かした重厚なリフに、運指の激しいテクニカルな中音リフが重なってくる。後者に関しては単音でメロディをなぞるといったよくある”エモさ”を超越した複雑さを持っており、なるほど昨今のテクニカルなメタルのそれの影響が色濃くあるだろうと思う。
kamomekamomeの凄さは何かというと本当にこの間のライブを見ていてよかったのだが、そのテクニカルさに対する潔い姿勢だと思う。kamomekamomeバンドはハードコアバンドだ。これは間違いない。超絶技巧を棒立ちで眺めるバンド(こういうバンドが悪いといってるわけではないです、念のため。)とは明らかに一線を隠す。体を動かし、時にはモッシュし、時にはダイブし、拳を振り上げて一緒に歌うのがこのバンド。テクニカルさはクオリティ(not技巧)を高める手段でしかない。あくまでもそれらで作り上げる曲が生命線。だから非常に直感的で肉感的でタフ。そして聞き手にとってはこの上なく楽しい。メロディが欲しいなら全編メロディアスな曲を聴けば良いので、激しさを追求するバンドがなぜクリーンパートを導入するのか、という問題に対しての一個の回答の様な音楽性だと思う。つまり激しさもメロディアスさも手段であって目的地とは微妙に異なるのかもしれない。激しさとメロディが渾然一体となったこれらの楽曲が何を志向しているのか、というのは非常に面白い問題だ。

今まで聞かなかったのがもったいなかったな、と思わせる素晴らしい内容。まだ聞いていない人は是非どうぞ。

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