2017年2月12日日曜日

RESET/REBUILD@新代田Fever

結構前になんとなしに買ったチケット。買った後で同日にswarrrmのライブがあって「げ〜〜」となったんだけどもちろんチケットを購入したこちらにいくことにした。特にどれがお目当てということでもないくらいの軽い気持ちで遊びに行った。ところがこれがとんでもなく面白かったんだな。
新代田Feverは本当に駅から近い綺麗なライブハウス。物販のスペースも結構広い。フロアも縦横に広くて多分200人くらい入るのかな?開演ちょい前に到着したら既に人が7割がた入っていました。

bilo'u
一番手はbilo'u。バンド名からなんとなくアングラなドゥームかな?とか思っていたのだが、蓋を開けてみたら全然違った。非常にテクニカルなプログレッシブなハードコア(デスコアというのだろうか?)を演奏するバンドだった。5人組のバンドで3人の弦楽隊は全員楽器の位置が高く、ネックが太かったのでおそらく弦の多い楽器を操っているのだろう。とにかく音がよく動く。モダンな作風でMeshuggah(とそこから続くDjentの系譜か)を彷彿とさせる同じ低音をマシーンのようにズガガガと奏でる一方、もう一方のギターがテクデスばりの高温フレーズを弾いていくめまぐるしいスタイル。ウヒョーと思ったが、よく聞いているとThe Dillinger Escape Planにも通じるところがある。向こうはしたいにハードコアにポップさを曲と特に歌に溶け込ませていったが、このバンドはメロディアス性をギターの音に託しているのが違うかな。あとは音の数が多い。結構変わった音(琴みたいな)をSEに使ったりもしている。個人的にはピロピロフレーズより、メロデスみたいにある程度キャッチーな単音を低音に被せていくようなパートの方が好きだな。格好良かったけどボーカルの変態ちっくな高音パートが演奏に埋もれがちだったのがちょっと勿体無いと思った。

Tomy Wealth
続いてはTomy Wealth。この人はちょっと前から企画で名前を目にしていたのだが、一体どんな音楽をやるのかちっともわからない。どうもドラマーの方だという。客の密度がぐっと上がっていたのでおそらくすごい人気がある人なのだろうと思う。
この日はTomyさんがドラム、サポートにベース、キーボード、バイオリンというバンド編成。始まってみるとぶっといドラムビートにずしりベースが入って、その上にキーボードとバイオリンが非常に美麗なフレーズ、メロディを乗せていく。これは人力ブレイクビーツかもしれないと思う。nujabes以降のピアノを使ったエレクトロニカにも通じるところがある。とにかく綺麗でお洒落だ。しかし力が強すぎる。ドラムは流石にメタルとは全く違って音をもっとソリッドに音を作っているけど、やはりブレイクビーツ/インストヒップホップに比べると音が強すぎるし、音の数も多い。(Tomyさんは結構おかずを入れてくる。)聞いている途中に思ったのだが、前述のジャンルの要素もありつつ、ポストロックにも片足を突っ込んでいるのでは?と思った。美麗、お洒落の要素では意識されがちな儚げさはあまりなくて、かなり力強くてライブで見ると高揚感を煽ってくる。ポストロックから頭でっかちな要素を配して、美麗さに特化するとこういう音になるのかもしれない。面白かった。

palm
続いては大阪のハードコアバンドpalm。ConvergeのJacobがアルバムのアートワークを担当したことも有名。ライブを見るのは2回目でその激しさを目にしていたから「これから暴力の始まりだ、グフフ」とかおたくくさいことを考えていたのだが、いざ始まって前より前で見ているとその考えは半分外れていた。カオティックを巻き込んだフックのあるハードコアを演奏するが、曲の速度は速くありつつ暴れられる低音パートを同居させていて直感的に楽しめるハードコアを演奏するバンド。激しい曲もそうだが、ボーカルの高橋さんがその激しいステージアクションでフロアを混沌とさせていく。左右に落ち着きなく動き回る。フロアからそれとわかるくらい勢い強く足を振り下ろす。マイクを頭にぶつける(赤くなっていた)。などなど曲はほとんど全部叫びっぱなし。演奏が始まってすぐにフロアではピットが発声。マイクをフロアに向けると熱心なファンが叫びに飛び込んでくる。高橋さんはおっかないがその顔は笑っている。暴力性というとこのバンドの魅力の半分も伝えられていない。palmの音楽はライブで聴くと伝染性がある。palmの音楽はライブハウスという空間に対する強制的なエネルギーの充填である。過激なパフォーマンスが見ているものに伝染していって客も暴れ出す。エネルギーがどんどん消費されていく。なんかすごいものを「熱い」と例えるのは少なくともこの場ではとてもあっている。熱いものはご存知の通り分子の動きが激しいということだ。ぶつかり合う客は熱さの象徴に他ならない。高橋さんは喋るととっても人懐っこい人で「ありがとうございました!」という言葉が印象的。大人になって思うのはきちんとお礼を言える人は本当にかっこいい。めっちゃ良かった。

Vampillia
続いてはやはり大阪の音楽集団Vampillia。ステージに姿を現さないリーダーのもと、ブラックメタルを基盤とした独自の音楽性を展開している。音楽以外のところでも結構目立つので話題性に富んでいるバンド。ライブを見るのは結構久しぶり。今日はゲストのギタリストを迎えた編成で、全部で10人(ギター3人、ベース、ドラム2人、キーボード、ノイズ、バイオリン、ボーカル)でステージにはほとんど余裕なし。
ベースのミッチーが最初に宣言した通り笑いの要素はほとんどなしでシリアスかつタイトな内容だった。過去のアルバムから結構満遍なく演奏していたと思う。個人的には大好きな「Circle」をモンゴロイドさん一人バージョンでやってくれたのが嬉しかった。ツインドラムが轟音を叩き出し、トリプルギターが絡みつくトレモロリフを奏で、ピアノとバイオリンが別世界のように美しくも胸をかきむしるくらい悲しい音色を奏で、ノイズをまぶした中ボーカルが絶叫スタイル。今回見てわかったのはそれは美への挑戦だ。もともとほとんど楽器を弾けない素人を集めて作ったのがこのVampilliaだという。そんな音楽的なブサイク集団が時に大言を吹きつつも、こんなイマジネーションで作るゲートのような曲を演奏するなんてこんな物語はちょっと痛快である。Vampilliaは美麗な曲を演奏しつつ、醜い自分たちを隠さない(むしろ茶化して前面に押し出したりする)、それは既存の美に対する挑戦だ。モンゴロイドさんの不敵なえみにもその話題性の背後にある強い強い不屈の闘志を感じた。既存の美をぶっ壊して新しい世界を作る、という試み。というよりは企てだろうか。
本日の企画名は「Reset/Rebuild」だ。palmの現状を突破しようとする動き、Vampilliaの新しいものへの渇望めいた推進力を目の当たりにしてこの企画名に対して感嘆の念を感じた。すごい。

kamomekamome
興奮冷めやらぬ私が呆然としているとトリのkamomekamomeが始まる。元ヌンチャクの向さんのバンドで今までで4枚のアルバムをリリースしている。ハードコアをベースにかなりテクニカルな要素を持ち込んだバンドで、さらにそこにメロディアスな日本語ロックの哀愁を持ち込んだオリジナリティを持っている。といっても私は2nd「ルガーシーガル」(回文である)しか持っていない。どんな感じかな?くらいの気持ちだったが、フロアの密度が半端ない。ぎゅうぎゅうだ。演奏が始まり向さんが出てくるとすごい声援。そしてあっという間にダイバーが頻出するハードコアなフロアに。Vampilliaは異界に連れていく異次元だとすると、kamomekamomeは徹頭徹尾現実的なハードコアだ。テクニカルな要素は隠しようがないが、それを包括するハードコアのストレートな勢いはどうしたことだろう。明らかに曲が中心にあり、テクニカルさはその道具でしかない。技巧に走って曲の区別がつかなくなるなんてことは皆無である。ベースと向さんの掛け合うようなボーカルに客が手を振り上げ、そして一緒に歌う。ダイバーは絶え間ない。向さんは格闘家のような動きと多彩なボーカル(クリーンで歌う、ハードコアに叫ぶ、メタリックに咆哮する)で一挙手一投足から目を離せない求心力がある。MCではまた仕事が始まる毎日があるのだから土日は楽しもう(というかぶちかませ!と最終的には煽りまくっていたのだが)という生活に根ざした、明確な哲学を感じさせる。桃源郷的な別世界に対して、こちらは疲れる日常にあるエアポケットのような祭りの場のようなイメージだろうか。気づけば曲も知らないのにむやみに腕を振り上げる自分がいて面白かった。汗だくだった。ライブ、ライブの楽しさはいろいろあるだろうが、この日のkamomekamomeはめちゃくちゃ楽しかった。

本当何の気なしに遊びに行ったライブだったが行って良かった。超楽しかった。巨大な音で脳が活性化するのだと思う。いろいろ考えがわいてくるし、高揚感で体が動いた。ライブは楽しい。いくまで知らなかったのだがこの日はLauraさんという異国の女性が企画したもの。凄まじいバンドの選択眼と、そしてそれを象徴する素晴らしい企画名だと思った。それは現状に満足しないで、うちこわして新しいものを作ろうとする企てであると思った。本当に規格名がストーンと理解できた気がしたもの。どうもありとうございました。

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