2017年3月25日土曜日

V.A./KEEP AND WALK 10th Anniversary Compilation

全国に展開するレコードショップdisk union傘下のレーベルKEEP AND WALK Recordsのコンピレーションアルバム。
2017年に自身のレーベルからリリースされた。
タイトル通りレーベルの創立10周年を記念してリリースされたもの。アートワークはyuvikiri-zukeiことkamomekamomeのボーカリスト向さんの手によるもの。二つ折りになった紙のジャケットとソフトケースに包まれた簡素なスタイルだが、これはおそらく値段を下げてなるべく手に取ってもらおうという意図だと思う。
全部で16バンドが1曲ずつ提供しており、全てが新録音された新曲(未発表曲)ということらしい。非常に贅沢なアルバムで、収録バンドの中には現在活動停止中のものもあるとか。

一つのレーベルが関係のあるバンドの既存曲から選択して行けばそれはレベールのこの植えない名刺になるだろう。このアルバムは全て新曲で構成されてるので過去に加えて現在進行形の現状と未来を提示している意味で面白い。収録バンドは全て国内のバンドというのも明確なレーベルの姿勢が見て取れる。
全部で16曲、バリエーションはあるが軸になっているのはハードコアだと思う。そのぶっとい背骨が一本アルバムを貫いている。面白いのはかなり日本的なハードコアに特化しているなと思う。後半Blindsideから後ろはかなりピュアで攻撃性の高いハードコアが展開されるのだが、それ以外は結構フックのあるバンドが多い。カオティックというとちょっと違って、クリーンボーカルの頻度と重低音に偏向していない音作り、クリーンボーカルの登場頻度、そしてメロディアスさを鑑みると激情ハードコアっぽい。ここでいう激情は例えばOrchidやYaphet Kottoのような始祖的なバンドではなくて、それらを父母に持ちながらも独自の進化を遂げたenvy以降の激情のこと。(私はこっちから入ったもんで激情というとどうしてもenvy...!となってしまうのだ。)歌詞は日本語で乾いた音のハードコアを基調としつつ一旦その曲構成をバラバラに解体して、そこに叙情感をニューススクール・ハードコアとは別の観点から注入して再構成したもの。激しいパートに加えて、アルペジオに象徴されるゆったりとしたアンビエントなパートを対比させる曲構成。ドラマチックかつ空間的でじわっと広がっていくようなドラマティックさ。
と言ってもこのコンピレーションの場合は”哲学”(というよりは衒学と言ったら怒られるかもだけど)的な崇高さを希求するというよりはもっと聴きやすい、聴き手にもストレートに届く、ポピュラーなロックの要素を曲に持ち込んだバンドがおおい。だから非常に直感的に聞こえて、楽しめる。いわば実際的であって「歩き続ける」という前向きなレーベル名、そしてその特色をよく表していると思う。そんな中でも妖しい歌謡曲的な雰囲気をプンプンに放出するマシリトだったり、やっぱり圧倒的に黒いisolate、鋭くシリアスなNervous Light of Sundayなどそんな中にも振れ幅の極端なバンドが同時に違和感なく収録されているのが、コンピレーションの醍醐味という感じ。
時に青臭いほどに真っ直ぐな歌詞がこのジャンルでは大きな特徴だと思う。おそらくコストの関係でオミットされた歌詞をオフィシャルHPで補完されているので是非曲と合わせてどうぞ。

これからの季節にぴったりのコンピレーションだな〜と思う。日本らしさはともすると悪い意味でも使われることが多いけど、むしろ明確に日本の特定のハードコアをぐっと提示する力強さはかっこいい。この手の音楽が好きな人は是非どうぞ。

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