2017年6月25日日曜日

khost/Governance

イギリスはイングランド、バーミンガムのインダストリアル/ドゥームメタルユニットの3rdアルバム。
2017年にCold Spring Recordsからリリースされた。
khostは2013年にJustin K BroadrickといくつかのpロジェクトをやったこともあるAndy SwanとDamian Bennettによって結成されたバンド。最近では日本の林田球さんの漫画「ドロヘドロ」のコンピレーションにも参加している。私はこのコンピレーションから興味を持って2nd「Corrosive Shroud」を購入した次第。
Sunn O)))に影響を受けたような垂れ流しの重低音に、エクスペリメンタルなインダストリアル要素とある意味よりとっつきの良いドゥームメタル要素をぶち込んだ楽曲を披露しており、モダンにアップデートしたGodfleshとも例えられるようなどっしりとした音楽だった。とても気に入ったので今回の新作も購入。

基本的な路線というか土台は同じで、一撃の重たい重低音を引きずるように垂れ流す。すでにリフは溶解しており、パワードローンといった趣すらある。そこにやけに金属的なドラムを絡めてくる。金属板をぶっ叩いて出しているかのようなキンキンした音は無人で動き続ける非人間的かつディストピア的な未来の工場で録音された騒音のようだ。ギターが奏でる重低音の響と、重低音〜金属的な高音まで抑えたドラムの相性はあいも変わらずバッチリ。そこに乗るボーカルはしゃがれたデス声でこれは妙に感情が抜けていて、明らかに焦点の合わない目で空虚にボソボソと呟かれている。デスメタルなんかは非常に感情的な音楽であるのに、激烈な音楽性を保ちつつそこを放棄しているのが面白い。一方妙に怪しい節のある「のわ〜〜」とした詠唱のような歌声も頻繁に使ってきてひじょに”リチュアル感”がある怪しい世界を構築している。ここまでは基本的に前回と同じ世界観であり、「ドロヘドロ」コンピレーションに提供した1曲目「Redacted Repressed Recalcitant」何はそのkhostの要素がぎゅっと詰まったキラーチューンと言える。ところが2曲目「Subliminal Chloroform Violation」では大胆に我が国の民謡「さくらさくら」をフィーチャー。khost流のインダストリアルに侵されて感情が抜けて腐敗している歌声が何とも恐ろしくそして虚無的で、退廃的である。いわば攻撃性から軸をずらしてもう少し別の地平を目指した音を作り出そうとしている姿勢が見られる。この曲以外でも「Low Oxygen Silo」では管楽器(トランペットかサックスかと思うが)がメインを張っているし、その他の曲でもアンビエント、女性ボーカルの導入(どれも感情が抜けている)、アコースティックギターなどなど、いわゆるヘヴィと称される音楽性では通常用いない要素、アイテムを大胆に取り込んで唯一無二の音楽を構築している。いわばデスメタル的な力自慢から明確に一歩退いて独自の音楽性を模索しているわけだけど、もともとインダストリアル成分と、程よく隙間の空いたドゥームメタルのフォーマットは新要素を持ち込むのは適していたのだろう。また過去作品でkhostの重低音は完成されていたわけだから、それを土台に次の武器を探しにいった過程がこのアルバム、といっても良いかもしれない。
「エクスペリメンタル」というのは今結構曖昧な意味でメタル界隈では使われているが、このように多様な音楽性を取り込みながらも唯一無二音を鳴らしているバンドには非常にしっくりくる形容詞だと思う。「Governance」では”非人間的な虚無さ”という統一されたテーマでまとめ上げられているため、異なる角度が全て円の中に収まっているように感じる。

2ndから大きく化けたんだけどこれが非常にかっこいいわ。こうなるために前作があったのかというようなぢ続き感もあってあるべきところにきっちりはまった感じ。インダストリアル好きは人は是非どうぞ。徹頭徹尾不穏で楽しい。金属的な響きにはその余韻に妙に寂しさがあると思うが、その余韻をひしひしと感じられるとても良いアルバム。非常におすすめ。

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