2017年7月8日土曜日

heaven in her arms/白暈

日本は東京のポストロック/ハードコアバンドの3rdアルバム。
2017年にDaymare Recordingsからリリースされた。
コンスタントに活動しているような気がすぐがそれでも同じく日本のブラックメタルバンドCoholとのスプリット「刻光」が2013年なので4年ぶりくらいの音源になる。

Convergeの曲から名前をとった5人組のバンドでボーカルがギタリストも兼任、合計3本からなる重厚かつ繊細なアンサンブルが特徴のバンド。難しい漢字を使いつつもも内省的で自己と他者、自己と世界的な世界観をポストロック的な静と動を行き来する(比較的)長めの尺の曲で表現する手法は、正しくenvyに端を発する日本の激情型ハードコア(スクリーモ、エモバイオレンスとは美的感覚という点でやはりちょっと違うジャンルだと思う)に属するバンドだと思うが、その中でもセンチメンタルさを疾走するトレモロリフというブラックメタルからの要素を大胆かつ器用に取り込んだバンドではなかろうか。とってつけたような必殺トレモロというよりは、トレモロを使って表現するポストハードコアという感じで完全に独自の手法を確立させようという意識で持って曲を作り、またライブではとてもかっちりした演奏をしているのが印象的だった。
「白暈」とは「ハクウン」と読む(ハクマイではない)。白い眩暈のことかと思ったら暈とは”太陽または月のまわりに見える輪のような光。”のことらしい。確かに英語の題名は「white halo」だ。今までは黒を基調としたアートワークが基本だったと思うが、心機一転新作では白を基調とした美しいものになっている。
全7曲で前述のスプリット「刻光」収録の「終焉の眩しさ」を中心に据えていることもあり、基本的には前作からの延長線上にある音。改めて1st「黒斑の侵食」を聞いてみると使っている音の類やコンセプトは同じでも結構印象が違う。今の方がずっと滑らかでスムーズな印象。ガツっとしたハードコア感は減退したが、模索の末に独自の世界観を手に入れたのだろうと思う。トレモロと言ってもプリミティブなブラックメタルからそのまま拝借してきたらガリガリした非常に攻撃的なものだろうが、それを音をクリアにし、音の輪郭を整えて角を取った非常に温かみと美しさのあるものに作り変え、初期ではカオティックという表現もしっくりくる性急に展開する曲を醍醐味をそのままに油を丹念に刺したかのように滑らかなものにした。それは音の作り方とさらに曲の作り方も影響しているのだろうと思う。それがコード進行なのかよく練られた展開なのかはわからないが、閉鎖的で厭世的で個人的な曲というよりは、外に外に開けていく(ここら辺は空間的というポストロックの要素が浮遊感とは別の視点で意識されているのではと思う)壮大な曲に変遷しつつあるように思う。別に明るくなっているわけではないし、どちらかというと悩みが感じられるくらい曲ではなるのだが。弱って死にそうに丸まるのではなく、嫌味なくさらけ出していくようなイメージ。そう言った意味では白地に荒々しい青というのは曇天とその切れ間に覗く晴天のようなアートワークは非常にあっていてカッコ良い。

喉を枯らしてのスクリームとボソボソしたポエトリーリーディング、独自の世界観を持った歌詞とテーマ、アルペジオの静かさトレモロの激しさが同居した曲などきっちり激情のツボを抑えているところも好きな人にはたまらないのでは。個人的には何か非常に真面目なバンドというイメージが勝手にあって、今作を聞いてもやはりそうだなと思ってしまった。ブラッケンドで真面目というと同じく日本のisolateを彷彿とさせるのだが、あちらは半分狂気なのだがこちらはあくまでも真面目でアーティスティック、美麗という言葉すら似合うハードコア。

0 件のコメント:

コメントを投稿