2017年9月16日土曜日

DEATH SIDE/BET THE ON POSSIBILITY

日本のハードコアバンドの2ndアルバム。
元々は1991年にSelfish Recordsからリリースされた。私は1stアルバムとともにリマスターの上Break the Recordsから再発されたCDを購入。
DEATH SIDE前作から二年後にリリースした2nd。もちろん1stと同時に購入したわけです。「その可能性に掛けろ」という希望に満ちたタイトル。バンドはこのあとはフルアルバムはリリースせずに1995年には解散している。

レコード屋のdisk unionが配布しているfollow upという冊子に今回のリマスターにあたってDEATH SIDEのボーカリストであるIshiyaさんのアルバム解説が乗っている。それによるとこのアルバムというのは、当時プログレに凝りだしたギタリストのChelseaさんがああでもない、こうでもないと1年以上もレコーディングを続けていてさらに終わりのみえない感じになっていた(非常に凝り性な方だったのだろう)のをIshiyaさんがある程度ディレクションをして完成に導いたそうだ。
もともと1stもハードコアとして素晴らしい攻撃性を持ちながらも、非常に表情豊かな曲が魅力的なアルバムだったわけで、その背後にはこのハードコア以外のジャンルに対する音楽的なバックグラウンドがあったのだろうと思う。(大体バンドをやっている人はとにかく音楽好きなのだから幅広い知見を持っているのはどのバンドでもそうだろうとは思うけど。)この2ndではさらにその方向性が推し進められており、インタールード的な曲の導入や一貫した世界観(Chelseaさんにはコンセプトアルバムにしたい!という希望があったそうだ。)、チャンネルを多用した録音、ピアノの音(!)などが取り入れられている。15曲と1stから曲数は落としているが、トータルは42分半と収録時間は伸びている。
ただ1stであった爆発するかのような推進力を失っているかというとそうではない。最後の曲が7分あるので実は1曲あたりの曲の長さも1stからそんなに変わっていない。このバンドはとにかく表現力がすごいと個人的には思うわけなんだけど、この2ndでは1stをさらに推し進めて、短く、速く、攻撃的というハードコアの枠の中で一体どれくらいの表現ができるのか、というテーマにチャレンジしている。速くて短く恐ろしい曲がハードコアの最高峰なら、Naplam Deathの名曲「You Suffer」があればハードコアはもう充分なはずではないか?
低音部だけでなく、中音域から高音域までを自由に使ったリフはなんとなくオリエンタルな雰囲気がある(1曲めや8曲目など!)、吐き捨て型のボーカルを彩る熱いコーラスワーク(にも曲によって非常にバリエーションが有る)、あいかわらずメリハリの効いた曲展開(ギターのアルペジオパートを導入するなど1stに比べるとかなり鮮やかだ。遙か後ののポストロックや激情に影響を与えたというと言いすぎだろうか。)、そこに込められた渦巻く感情の豊かさ(このあたりはただ怒りを撒き散らすのではなく、ただクソだと言い捨てられない世界に対する様々な感情を、「どうしたら良いのだ?」という一種のやるせなさに彩られた歌詞にこめているように思えて、個人的にはとても好きだ。このアルバムから歌詞はIshiyaさんも書くようになったとのこと。それまではChelseaさんが書いていたようだ。)、それを表現する叙情的なメロディ、そしてなにより技術一辺倒にはなりようがないトータルできっちりまとめるハードコア。
やはり8曲目の「Life is Only Once」が個人的には好きだ。テーマとなるリフがかっこいいし、その背後で黙々とリフを綴るようなベースも良い。その上に乗るギターは中音域がよく伸びて感情の高まりとともに高音域に伸びてくる。コーラスに彩られたボーカルがメッセージを吐き出すが、曲全体を覆う雰囲気はもっと複雑だ。そしてテーマを速度を落としながらリフレインするクライマックス。1stの「Mirror」が突進型ハードコアの一つの精華だとすると、この曲にはグラデーションがあって、ハードコアでありながらもそこを飛び越えようとするこのバンドの良さがギュッと詰まっているような気がする。

ハードコアでありながらも豊かな表現力が魅力のバンドだと思うし、まさにその限界に挑んだという感じがするのがこの2ndアルバム。個人的には非常に甲乙つけがたいのだけど、通して聞くなら1st。じっくり曲単位で聴き込むならこちらの2ndかな〜〜。是非1stとセットでどうぞ!

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